毎週日曜日更新のウェブマガジン。 俳句にまつわる諸々の事柄。 photo by Tenki SAIBARA 文法外の文法と俳句の文語(後編) 大野秋田 本論考は、『澤』平成24年8月号「文法外の文法と俳句の文語」を、加筆の上、前後編の形で再掲載するものです。 ≫(前編) 二. 俳句の文語 教科書の文法 昔の人は文法に対して存外柔軟な考えを持っていたのではないかと思われる。文法は従うべきものだが場合によっては破格も許されるくらいに思っていたのではないか。 正岡子規は『俳人蕪村』において「更衣母なん藤原氏なりけり」「我宿にいかに引くべき清水かな」、「大文字近江の空もたゞならね」の三句について「此等の俳句を尽く文法に違へりとて排斥する説には反対する者なり」と述べている。 外山正一が自作の詩の注に「繋り結び、テニヲハ等は、旧来の法則に拘泥せず」と記したこと、佐佐木信綱が「文法も変遷する」といい「文