〈あとがきのあとがき〉100年前からもうポストモダン!? 唯一無二の作家、ウラジーミル・ナボコフの不思議な魅力 『偉業』の訳者・貝澤哉さんに聞く 『カメラ・オブスクーラ』『絶望』に続き、光文社古典新訳文庫のロシア語で書かれたナボコフ作品の第三作目、『偉業』の翻訳が完結した(2016年10月刊)。『ロリータ』『アーダ』をはじめとして、1945年にアメリカに帰化した後に英語で書かれた多くの作品と、多彩な技巧を駆使した難解な文体で知られるこの大作家が、ロシア革命から逃れたヨーロッパの地で、亡命ロシア人たち向けに書いたロシア語原文の初期作品群には、どんな特徴があるのだろう。一作目の翻訳開始から都合7年をかけて三作を訳し終えた、貝澤哉さんに話を聞いた。 長い間、ナボコフと言えば「複数の言語で書く亡命作家」というイメージが先行し、7、80年代ころの一般的な印象では、貴族としてロシアに生まれ、革命後に