隠岐さや香さん(東京大学教授) ①パイドロス(プラトン著、藤沢令夫訳、岩波文庫・935円) ②植物と帝国(ロンダ・シービンガー著、小川眞里子、弓削尚子訳、工作舎・4180円) ③危機の中の学問の自由(羽田貴史、広渡清吾、水島朝穂、宮田由紀夫、栗島智明著、岩波ブックレット・682円) 夏空の下で鳴く蟬(せみ)は、①によると寝食を忘れて歌い続けた人の生まれ変わりだそうだ。哲学の古典である本書は読みやすくはないが、随所に不朽の煌(きら)めきがある。特にソクラテスが「神々から与えられる狂気」として恋を語る場面は美しい。 ②はフェミニズムの視点からの科学史書。近代科学の発展する18世紀の欧州では、カリブ海から伝えられた中絶薬の普及がむしろ妨げられ、女性の身体に関する無知が作られたという。知識は差別的な思想により抹殺されることもある。 自由な知を保障する「学問の自由」が実は人権の問題でもあることは意外
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