7月1 #625 坂本龍一さん――父の怒声が聞こえてくる カテゴリ:音楽 坂本龍一さん――父の怒声が聞こえてくる(食の履歴書) 2009/3/28付 日経プラスワン 坂本家恒例「夜明けのお茶漬け」 「伝説の編集者」の思い出 ご飯に熱いお湯をさっとかけたお茶漬けを食べると、音楽家、坂本龍一は今は亡き父の姿を思い出す。その記憶は、まだ坂本が小学生だった時分にさかのぼる。 「おい。お茶漬け!」。夜ごと酒場を飲み歩き、泥酔した父は明け方、帰宅すると必ず母にお茶漬けをつくるように命じた。どんなに遅くても、近所に聞こえるような怒鳴り声で歌いながら帰ってくる。 不安になった坂本は眠い目をこすりながら、そっと寝床を抜け出し、様子を見に行くのが常だった。「父は血の気の多い九州男児でね。いつも怒っているような軍隊口調で話すんです。とにかく怖くて、高校に上がるまで、まともに目を合わせたことがなかった」 泣く子も