世に論文の書き方の本は、数多あります。私自身も「論文・プレゼンの科学」という本を出版しています。初めて卒論を書く人、初めて科学論文を投稿する人、初めて学会発表をする人、初めて学位論文を書く人に向けて、論文の書き方をアドバイスしました。しかしなかなか学生達の論文を書く力は向上しません。なぜなのか考えました。 そして、分かりました。どうやらみんな、まだ論文が読めていないのです。読めないから、書けないのです。私の研究室では毎週月曜の朝に、Paper Review Seminarが開かれます。研究室によっては雑誌会とか輪講会とか呼ばれるゼミです。学生達が、自分の気に入った学術論文や自分の研究テーマに関係した論文を読んで、皆に説明をします。ぼんやりと聞いていると、発表は立派に聞こえます。著者に成り代わって実験や理論、結果など学術論文に書かれていることを細かく説明してくれます。でも、著者の顔が見えてこ