安全保障関連法の成立から1カ月。国会に法案を出した政権側も質問に立った野党議員も、ほとんどが戦後生まれだ。「戦争を知らない」世代の論議にもどかしさを感じた元日本兵は、「戦場の現実」を語り続ける思いを新たにしている。 中国戦線「通ったあとは焼け野原」 「戦争の危険性が多分にある法律だ。もう少し体力があったら、国会前に行って戦場の実態を話したかった」。兵庫県芦屋市の藤田博さん(89)は語る。 徴兵され、19歳だった1944年11月、中国の山西省に送られた。陸軍第一軍独立歩兵第14旅団第243大隊に属する中隊で、上官の命令で大砲の照準をあわせる任務を担った。味方の陣地が襲撃されると、周辺の集落に「腹いせのよう」に砲撃を浴びせた。 新たな支配地域を広げる作戦では、ひと月の予定でも1週間分しか食糧を準備せずに出発。行軍中、「現地調達」の名で農家に押し入っては食糧を奪い、家畜を肉にした。「抵抗する住民