傑作ホラー『ゲット・アウト』はアメリカ黒人差別を多面的に描く―「シドニー・ポワチエ問題」について © Universal Pictures 白人で進歩的な考え方を持っていると自負していた新聞社代表のドレイトンは、娘の結婚相手と会って驚いた。知的で穏やかな紳士だが、肌の色が黒かったのだ。ドレイトンは自分の中にも根付いていた差別意識に戸惑いながらも、心の底から娘を祝福できない。そう、現実の差別は本や新聞で読むものとはまったく違う。身近に起こって初めて自覚できる感情なのだ。 『ゲット・アウト』の元ネタは スタンリー・クレイマー監督『招かれざる客』(1967)はアメリカの人種問題を考えるうえで貴重な作品である。娘の結婚相手を演じたシドニー・ポワチエは1963年『野のユリ』で黒人として初めてアカデミー主演男優賞を受賞した。いわば、黒人俳優の先駆者的存在だ。ポワチエは紳士的な物腰で、インテリ層の役柄を