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ブックマーク / note.com/nijo_gawara (12)

  • 持続可能なミュージアムのDXとは(第9回):デジタル画像にはアナログなメタデータを|Tarashima Satoshi

    画像の管理の話をもう少し続けます。 前回の記事で、画像のファイル名にはあまり意味を持たせるべきではない、ということを指摘しました。機械可読、つまりコンピュータが処理しやすい形式にしておくほうが何かと便利だ、ということです。その一方で、画像は人間が見て、さまざまな判断を下すものですから、データの中に人間にわかりやすい情報を加えておくことが望ましいのも、また事実です。 現在のデジタルカメラは、撮影した画像データの中にさまざまなメタデータをExif(Exchangeable image file format) と呼ばれる形式で記録するしかけがあり、撮影した年月日・時刻、絞り・露出時間、撮影機材などに加え、撮影機材側に位置情報を記録する機能があれば撮影場所の緯度経度までも残しておくことができます。Exifデータが記録された状態の画像をSNSなどにあげることによって、個人の行動がさらされてしまう危

    持続可能なミュージアムのDXとは(第9回):デジタル画像にはアナログなメタデータを|Tarashima Satoshi
    egamiday2009
    egamiday2009 2021/12/12
    “記録しなければ被写体の情報が残らない、というのはデジタル画像だから、というわけではありません。写真という媒体が使われはじめて以来の長い問題だ”
  • 持続可能なミュージアムのDXとは(第8回):画像ファイルの名前|Tarashima Satoshi

    前回の記事を書いたあと、どちらに話を広げようかなと思案していたら、だいぶ間が空いてしまいました。今回はミュージアム資料のデジタル画像を作る際に出会う、一見些細な課題をとりあげてみます。 歴史の長いミュージアムであれば、過去に撮影、焼き付けしたフィルムや印画を大量にお持ちでしょう。ミュージアムにとっては貴重な情報資源です。しかし現在では、いわゆる「銀塩写真」の処理が可能な技術的環境はきわめて限られており、デジタル化しないままのフィルムや印画の利用はとても困難です。また、業務環境をデジタル化、ネットワーク化した場合、画像もまたデジタルデータとして投入、運用しないと非効率であることは明らかで、フィルムや印画のデジタル化の優先度は高いと言えます。したがって、できるだけ集中的にデジタル化の作業に取り組むことが望まれます。 フィルムや印画のデジタル化の技術については、さまざまな選択肢があり、各館の状況

    持続可能なミュージアムのDXとは(第8回):画像ファイルの名前|Tarashima Satoshi
  • 持続可能なミュージアムのDXとは(第6回):所蔵品DBと展示企画の共有|Tarashima Satoshi

    「もの」の管理と公開が仕事であるミュージアムにとって、「もの」に関する情報のかたまりである所蔵品DBは、中核をなす道具と言えます。少し先回りして結論を出してしまうならば、ミュージアムのDXの第一歩とは「館内の組織的な内部業務に所蔵品DBを利用しながら、DBが長期的に維持される状態を実現する」ことです。どんなに個別の仕事のデジタル化が進んだとしても、個別の仕事で発生したデジタル情報が即時に活かされれず、DBは何年か後に大きな手間をかけて書き換える、というのでは話になりません。業務への活用という課題は多岐にわたるので、順次とりあげてゆきたいと思いますが、まずは「所蔵品DBを使った展示企画の共有」という点で、一つ例をとりあげてみましょう。 東京国立博物館では、お正月恒例の特集としてその年の十二支を主題にした展示を企画しています。2021年の展示はこちらです。 2021年の東京国立博物館 特集「博

    持続可能なミュージアムのDXとは(第6回):所蔵品DBと展示企画の共有|Tarashima Satoshi
  • 持続可能なミュージアムのDXとは(第5回):中の人が使えば所蔵品DBが育つ|Tarashima Satoshi

    出版物の目録やパソコンで管理しているExcelのデータを使えば、外部に公開できる所蔵品DBをそれなりの形で作ることができます。ともすれば、これでミュージアムの外向けのサービスはできた、と考えがちです。しかしこのような作り方は、たとえてみると切り花を花瓶に生けたようなもので、よほど気をつかって維持管理していないと、データは遅かれ早かれ古びてしまいます。 ミュージアムの所蔵品のデータはそんなに変化するものではないのでは、と思われる方もおられるでしょう。実はそうでもありません。まじめに活動しているミュージアムならば、寄贈や購入で所蔵品は毎年増えてゆきます。これだけでも館内で管理しているデータと、外部公開しているデータの整合性をとる必要が生じます。研究の結果、作者不明であった作品の作者が特定できることもあります。まれですが、修復の結果、保存の形態が変わった、という場合もあります 東京国立博物館所蔵

    持続可能なミュージアムのDXとは(第5回):中の人が使えば所蔵品DBが育つ|Tarashima Satoshi
    egamiday2009
    egamiday2009 2021/11/02
    「館内業務のデジタル化が行われないまま、外部サービスのデジタル化、ネットワーク化だけが先行するのは…誤りです/活動を合理的に行い、同時に外部に対して可視化するためになすべきこと」
  • 持続可能なミュージアムのDXとは(第4回):誰が所蔵品DBを使うのか|Tarashima Satoshi

    ウェブで検索可能なミュージアムの所蔵品DBについては、ここ1年ほどの間に、もう一つ大きな動きがありました。文化庁が2018年度から継続している「文化庁アートプラットフォーム事業」の一環として、日の美術館が所蔵する近現代美術作品の情報をデータベース化した「全国美術館収蔵品サーチ「SHŪZŌ」」が公開されたことです。SHŪZŌは「収蔵」ですが、ちょっと人の名前っぽいというので愛称とされたそうです。2021年3月現在で、85館、作家数1,243名、69,889件の作品情報が収納されており、2022年度末(2023年3月)までに100,000件以上の登録をめざすとアナウンスされています。 全国美術館収蔵品サーチ「SHŪZŌ」 アートプラットフォーム事業は、日の現代アートの持続的な発展と、国際的な情報発信の拡大を主旨としており、事業全体は国立新美術館が文化庁から委託を受けて、5か年(2018-2

    持続可能なミュージアムのDXとは(第4回):誰が所蔵品DBを使うのか|Tarashima Satoshi
    egamiday2009
    egamiday2009 2021/11/02
    「所蔵品の情報を、まず誰が使い、誰が更新や改善をするのか。この点を明確にしておかないままでの情報の外部公開は、負担感の増大や長期的な情報の質の低下の要因となります」
  • 持続可能なミュージアムのDXとは(第3回):実は充実してきたミュージアムの所蔵品DB|Tarashima Satoshi

    あまり誰も言わないのですが、ミュージアムの所蔵品検索機能は、ずいぶん充実してきました。5年ほど前から、都道府県立の美術館・博物館のウェブサイトで所蔵品検索ができるかどうかのチェックを続けています。もちろん都道府県立だけがミュージアムではありませんが、大まかな動向はうかがえるだろう、というつもりです。だいたいミュージアム情報関係の講演とか大学の講義がある機会に、準備を兼ねて各ミュージアムのサイトを確かめています。 今回はnoteの記事を書こうということで、ひとわたり見直してみた結果が、下記の一覧です。「検索機能」というのは、閲覧者が検索語を入力して結果が得られる、という意味で、たとえば公開件数がある程度多くても、作家一覧からリンクで飛んでゆくようなギャラリー風のページなどはのぞいています。リンクの後は、検索語を入れずに検索する「全件検索」で表示される数値です。検索ができても、検索件数が出ない

    持続可能なミュージアムのDXとは(第3回):実は充実してきたミュージアムの所蔵品DB|Tarashima Satoshi
    egamiday2009
    egamiday2009 2021/11/02
    「歴史のある私立の美術館や小規模な自治体立の博物館が厳しい状況にあり、デジタル情報の蓄積や環境の整備に手が回らない、というのは無理からぬところがあり、ここは政策的なサポート」
  • 持続可能なミュージアムのDXとは(第2回):資料名称の特質|Tarashima Satoshi

    まずは、ミュージアム資料情報の特徴を、要素ごとに少しずつ見てゆきましょう。 ネット上の一部では大変人気の高い、福井県立図書館の「覚え違いタイトル集」が、近々単行化されるそうで、以前からファンである私も【朗報】と喜んでいます。うろ覚えのタイトル、著者名から、原著作を探り当てる図書館司書の能力に驚嘆し、検索結果との落差に大笑いする名コンテンツですが、この探索が可能なのは、行き着くところに汎用的な書誌情報がデータベースとして確立されているからです。また書籍の場合、著者名とタイトルをかけあわせれば、おおかた一意の情報に収束します。 いっぽうミュージアムの場合、たとえば「東京国立博物館の展示で見た十一面観音の仏像をさがしている」というレファレンスがあったとして、ColBaseで「東京国立博物館×彫刻×十一面観音」で検索を絞ると、ごらんのように画像のないものを含め、16件が見つかります。 つまりこれ

    持続可能なミュージアムのDXとは(第2回):資料名称の特質|Tarashima Satoshi
  • 持続可能なミュージアムのDXとは(第1回):前口上|Tarashima Satoshi

    昨年前半、第1回目の緊急事態宣言の期間中に「持続可能なデジタルミュージアムとは」という記事をnoteに連載し、その後、artscapeに「行かない/行けない人のためのデジタルミュージアムと、それを支えるデジタルアーカイブ」という、まとめの意味を持った記事を載せていただきました。多くの方の目にとまり、それがきっかけとなってお話や寄稿をさせていただく機会もありました。関心をお持ちの方が多くおられて、心強く思いました。 それから1年あまり、感染症の蔓延は多少改善の傾向が見られるとは言え、ミュージアムの運営という面から見ると、流行前への復帰はいまだ困難であり、運営形態の大きな変化を予想しながらも、方向を見定めかねている、というのが、多くの館での状況ではないでしょうか。収集、管理、調査研究、展示、教育といったミュージアムの基的な業務の要素に対して、どのように人的、財政的な資源を配分してゆくか、どの

    持続可能なミュージアムのDXとは(第1回):前口上|Tarashima Satoshi
  • 持続可能なデジタル・ミュージアムとは(第5回):解説のエコシステム|Tarashima Satoshi

    展覧会に音声ガイドを導入しておられる館は多いでしょう。音声ガイドの歴史が大変長く、欧米では1950年代までさかのぼることは、この分野を代表する会社の一つで、東博でもよくお願いしているアートアンドパートさんが自社のウェブサイトの中で紹介されています。実際に今どんな仕事をされているのかは、やはり多くの展覧会を担当していただいてきたアコースティガイド・ジャパンさんが最近noteを立ち上げていて、様子をかいまみることができます。眼による鑑賞を止めずに、リアルタイムで観覧者に情報を伝えられる、という点で、すぐれたしくみです。 一つの展覧会に使う音声ガイドの制作は、私もいくつか経験しましたが、なかなか大変な仕事です。ふつう、展示しているすべての作品にガイドは付けられないので、まずどれにガイドをつけるかの選択から始まり、読み上げる文についてはだいたい図録の項目執筆者と制作会社との間でやりとりをしながら

    持続可能なデジタル・ミュージアムとは(第5回):解説のエコシステム|Tarashima Satoshi
    egamiday2009
    egamiday2009 2020/05/07
    “「どのようにすれば仕事量の増加を抑えて長期の運用ができるか」という課題に対応する必要がありました”
  • 持続可能なデジタル・ミュージアムとは(第4回):「モノ」か「コト」か|Tarashima Satoshi

    「モノからコトへ」というのは、マーケティングでよく見かけることばで、ここ数年来多用されていますが、かなり使い古された感もあります。「商品やサービスを得て、使うこと自体に価値を見出すモノ消費から、旅行趣味など一連の体験全体を高く評価するコト消費へと消費動向が変化してきた」みたいな使われ方をします。 前にご紹介した「デジタルミュージアムに関する研究会」を受けた研究プロジェクトの中で、廣瀬通孝先生がよくこの「モノ」と「コト」の対比を強調されていました。検索してみると、その後あちこちで言及されていますが、こちらの2011年の『情報処理』の論文あたりが、早い例かと思います。 館の性格にもよりますが、リアル・ミュージアムでは、まず展示品(モノ)をモノとして見て理解してもらうことに力を注ぎます。理解、というのは必ずしも見る人がそれを説明できる必要はないと思います。「これヤバい」でも「尊い…」でも「(語

    持続可能なデジタル・ミュージアムとは(第4回):「モノ」か「コト」か|Tarashima Satoshi
    egamiday2009
    egamiday2009 2020/05/06
    これはいい説明“伊能図の魅力は(1)でかい!(2)美しい!(3)細かい!の3つの要素によって伝わるので、これらをそれぞれ、どの伝達手段に配分するか…という切り分け”
  • 持続可能なデジタル・ミュージアムとは(第2回):無観客ギャラリートークの意味|Tarashima Satoshi

    まずは展示室の中から話を始めてみましょう。 東京国立博物館は政府の方針を受けて、2020年2月27日(木)から急遽休館となり、展示を見ることができなくなりました。この週は24日(月)が振替休日、25日(火)が休館日で展示替え日にあたり、特集など新しい企画は26日から始まっていたのですが、わずか1日で閉室になってしまったわけです。その中には毎年春恒例の特集「おひなさまと日人形」も含まれていました。 ふつうならば、「ああ残念、せっかくてまひまかけて展示したのにもう見てくれる人はいないのか(泣)」となるところですが、次の策に思い当たり、即座に実行した博物館スタッフはりっぱだったと言えるでしょう。翌週の3月3日には館のYouTubeチャンネルに映像があがりました。 【オンラインギャラリーツアー】三田研究員が語る、特集「おひなさまと日人形」 ごらんいただければ、おわかりのように、それほど上等

    持続可能なデジタル・ミュージアムとは(第2回):無観客ギャラリートークの意味|Tarashima Satoshi
    egamiday2009
    egamiday2009 2020/05/01
    “展示室の中身をネット経由で紹介しよう、という考えは、なぜこれまで注目されなかったのでしょうか。ネットの持つ伝達力に対する過小評価、というのが一つ思い浮かびます”
  • 持続可能なデジタル・ミュージアムとは(第1回):前口上|Tarashima Satoshi

    2006年から2007年にかけて、文部科学省内で「デジタル・ミュージアムに関する研究会」という、ちょっと変わった会議が開かれていました。当時の小坂憲次文部科学大臣(故人)の肝煎りで設立された、ということで、東大の情報学環におられた原島博先生が主査、池内克史先生や田中弘美先生といったVR畑の専門家の方々と東京国立近代美術館の水谷長志さんや私といったミュージアム側の人間とが、それぞれ委員になりました。 会議の中ではいろいろな技術的可能性が紹介されて、それはそれで大変興味深いことが多くありました。NHK技術研究所で8Kのディスプレイを初めて見たのもこの研究会の折でしたし、裸眼立体視や触覚の再現(ハプティクス)といった、先駆けとなる研究成果も目にすることができました。 ただ、ミュージアムの立場からは、実装するためにはまだ技術的に課題が多いなというのが正直なところで、研究会の報告を受けて実証研究が数

    持続可能なデジタル・ミュージアムとは(第1回):前口上|Tarashima Satoshi
    egamiday2009
    egamiday2009 2020/05/01
    “自らの支配する空間の外で、ミュージアムはその機能をどのように果たせるのか、というのは、実は現代のミュージアムにとって普遍的な問題であったはず”
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