<「千人計画」だけを批判する論調には決定的な視点が欠けている。日本はとっくに科学技術大国の座から転げ落ちつつあるのだ> 今回のダメ本 『中国「見えない侵略」を可視化する』 読売新聞取材班[著] 新潮新書 (2021年8月20日) 本書のベースになった読売新聞取材班による一連の「スクープ」は、少なくない在中国の日本人科学者を震撼させた。理由は、事の本質が全く理解されていないような記事が連発されたことだ。確かに取材だけはしているのだが......。 本書も含めて読売報道の基本的なロジックは、中国の軍事研究、もしくは軍事研究につながりかねない研究である「千人計画」に、日本人の優秀な科学者が参加しており、日本人科学者は結果的に中国の軍事研究に加担しているというものだった。果たして、どの程度妥当なのか。 私も渦中の在中科学者などに取材して調べた範囲では、そのような事実は一切なかった。一見すると仰々し