海外への投資取引を考慮していないことも、資本と労働の間の分配率が一定となるという結果が得られる理由である。だから、近年の世界経済のように海外への投資が活発になっている状況では、労働分配率が一定になるとは期待できない。なぜなら、所得が賃金と資本に分配されると考えるのは、所得を得るためには労働と資本の両方が必要だからだ。 しかし、海外から得られる財産所得は国内の労働を必要としない。例えば海外子会社から得られる配当が、日本にある本社で海外戦略を担っているような部門で働く人達の賃金に反映されることはあるだろうが、国内の工場などで働く人達の賃金にも分配されるとは考え難い。 今後対外投資を拡大することで海外からの所得が増え、日本全体としては所得の増え方が速くなるはずだ。しかし、対外資産から得た所得が普通の労働者に賃金として分配されるとは考えにくく、国民所得の伸びを賃金の伸びが下回って、国民所得の中で賃