東日本大震災の災害復旧事業で、宮城県が同県亘理町の景勝地「鳥の海」に整備中の防潮堤に住民から不満が出ている。津波防御で高くした結果、視界が遮られて海が見えづらくなったためだ。災害時の備えや観光地としてのにぎわい再生に向け、町などに水面(みなも)の眺望を取り戻す対策を求めている。 「すっかり海が見えなくなってしまった」 沿岸から約200メートルの場所に暮らす同町荒浜地区箱根田東行政区の桜井幸次区長は、視界を阻むコンクリートの壁を寂しそうに見つめる。 鳥の海は阿武隈川河口の南にある内湾状の汽水湖。震災前は沿岸に路面から高さ約60センチ程度の低い堤があった程度で、周遊して眺望を楽しめる観光スポットだった。 震災では、津波が堤を越えて大きな被害が出た。農林水産省は県の業務を代行し、鳥の海の湾内全長3.9キロの堤を、海抜3.6メートルの高さの防潮堤として整備し直す復旧工事に着手。北岸の1.2