一粒の涙がうつむいた顔からリンクに落ちた。今も私の記憶に鮮明に残る、涙を流しながら笑顔で歓声に応える姿。この54コマ後の写真にその滴が写っていた。 バンクーバー大会の銀メダルから4年。2014ソチ冬季オリンピックに臨む浅田真央選手への金メダルの期待は現地に入る前から日に日に膨らんでいた。 そんな中、始まったショートプログラム(SP)で浅田選手は、16位と出遅れた。選手に最も近いリンクサイドに入り、私自身のフィギュアへの思いも存分に表現すると意気込んでいたが、このSPの結果に気持ちの整理がつかなかった。 ソチ大会は私にとって初めての五輪だった。その意気込みに相反するように、他の競技で思うような写真が撮れず、自分の実力や運のなさに落ち込む日が多かった。それだけに最終盤に近いフィギュアの女子シングルで、これまでのリベンジを果たしたいという欲もあった。
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