現代のビジネスパーソンを取り巻く様々な現象を社会学の視点から論じる連載の第二回。前回提唱していただいた「ベタな現実に右往左往しない生き方」のモデルを、宮台真司氏はクリント・イーストウッド作品に見ることができると言う。 僕は大学で学生と接していろいろ話す機会がありますから、「ヘタレとそうでないものの区別がわからない」と言う学生には、『許されざる者』以降のイーストウッド映画を見ろと言います。現実社会でロールモデルが得られないならメディアの中に探せと。もちろん周囲に「この人のようになりたい!」という人物がいればそれに越したことはありません。 『許されざる者』以降のイーストウッド作品に共通するのは、ある種の「揺るぎなさ」の感覚です。揺るぎなさとは主人公の「佇まい」であり、世界観であり、言語化不可能な要素を多分に含みます。実際に映画を見た学生たちはよく「文化が違う、国や時代が違う」と言いますが、そう