何かあったはずなのにどうしても思い出せない。 その思い出せないこと ... フロイト「狼男」症例

何かあったはずなのにどうしても思い出せない。 その思い出せないことが自分を動かしてしまう。そしてその思い出せなかった「何か」が あるときふとしたことで少しずつよみがえってくる。 そういうことに、誰でも日常生活の小さなエピソードの中で出会ったことがあるかもしれません。 ここで紹介しようと思っている話は、「症例」ということもあって、 本人に苦痛を与える記憶の物語です。 精神分析学の創始者で有名なフロイトは、「トラウマ」「無意識」等の言葉で よく知られていますが、そういう言葉が編み出された症例そのものはあまりよく知られていません。 この「狼男」症例は、そのなかでも比較的よく知られているものです。 けれど、これはある男が狼男に変身してしまうというような話ではありません。 幼児期にある外傷的体験をし、それが後に神経症となってあらわれた 青年（の幼年期）がテ

[Labyrinthos]

>後にフロイトは、青年がみたとされる「原光景」が実際にはなかった（例えば、犬などの動物の場面を目撃しただけだった）と考えてもよいのだというふうに見解を修正します。