スタンダードトレード（家具）: 向島日記

木工家具職人、デザイナー、そして経営者。家具工房、スタンダードトレード（東京・世田谷）の社長、渡邊謙一郎（３４）には三つの顔がある。職人の知識 とこだわりを会話に織り込みつつ、注文主の潜在的な要望を探り当てる。生活スタイルにまで配慮してデザインを決める。そんな接客術がファンをふやしてい る。 何の変哲もない、オーソドックスなデザインの本棚。よく見ると、左右の側壁の正面側の断面が少し変だ。幅二センチほどの断面は内側に向いて斜めに角度がつ いている。天板も本棚の床に当たる部分も同じ。つまり、正面から見ると、四方の枠がすべて内側に向いてカットされている。 チェストのひき出しの前面の板にも工夫が光る。四方の縁の部分が約二ミリ、前面の板全体より高くなる、「ちり」と呼ばれる段差が施される。 「ありそうで、ない」。スタンダードトレード（スタトレ）の渡邊謙一郎が作る家具には、そんなデザインが多い。しかし、