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江戸怪談より 「金弥と銀弥」 | 砂村隠亡丸の余苦在話-よくあるはなし-
こんな話がございます。 さる国の城の奥御殿に。 侍女が二人おりまして。 名を金弥(きんや)に銀弥(ぎ... こんな話がございます。 さる国の城の奥御殿に。 侍女が二人おりまして。 名を金弥(きんや)に銀弥(ぎんや)ト申しましたが。 容姿は世にも愛らしく。 仲はト言えば睦まじく。 起き伏し常にともにあり。 いずれ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)で。 「銀弥さん」 「はい、金弥さん」 ふっくらト白いもち肌に。 緑の髪を肩まで下げ。 紅い唇をすぼませながら。 「お花が咲いておりますねえ」 「本当。きれいに咲いておりますねえ」 ナドト微笑み合う様は。 まるでメジロの姉妹のようで。 十六の娘盛りではございますが。 あどけなさはほんの童女のよう。 二人の零れんばかりの愛嬌に。 主君も深く慈しんでおりましたが。 ある時のことでございます。 金弥がふとした風邪心地から。 ひどく患いつきまして。 遠く離れた父母の家に。 しばし里帰りトなりました。 ところが、それから待てど暮らせど。 一向に金弥の消息がございませ
2018/03/25 リンク