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うつ病者の大樹
あるうつ患者が死んだ。うつという言葉すらも確かではない時代。 気狂いだの、かたわだの、そんな言葉が... あるうつ患者が死んだ。うつという言葉すらも確かではない時代。 気狂いだの、かたわだの、そんな言葉が平気で横行していたある中世の街の一角。 彼はともかく、その身分の苦しみと自らの容姿、生来の虐待によってたくさんの苦しみを身に受けて、ある絶望の朝、地上に沈み込むように倒れた。 太陽がすべての命に強い明暗を落とす、残酷で何気ない日だった。 彼が死んでも誰一人として弔いに訪れるものはなく、その肉を食べに訪れたカラスもただ無感情に自らの体を温めるために彼の体をついばんだし、感傷もなく去っていった。 骨になった彼を小鳥たちが楽しそうに眺めていたが、それすらいなくなると草が茂り、小さな花が周辺に咲いた。 それからどの大陸の風から運ばれたかもわからぬ種子が舞い降りると、小さな枝となって春の小鳥の歌声とともに伸び始めた。 数十年後、枝は螺旋状に絡まり、大きく薄暗い大樹となって周辺を覆うようになった。 かつて
2021/04/07 リンク