【無能論】無能とは何か④｜市井厭人

健常の烙印らくいん 私がまだ己が無能を真に理解しておらず、身の丈に合わない正社員という立場で働いていた時のことだ。ある日、女性の先輩社員を怒らせてしまい、きっぱりとこう告げられた。「周りが見えないのは何かの病気なの？ そうならちゃんと教えてよね」と。 つまり、病気ならまだ許せたのだ。ところがお生憎様、私は健常の烙印らくいんを押されている。 2004年の秋、私は初めて心療内科を受診した。大学に入って友達を一人も作ることができず、精神的にとても落ち込み、誰かに助けを求めたかったのだ（今にしてみれば大したことはないのだが、当時はより大きな苦しみ、すなわち無能であることの苦悩を知らなかったので）。 しかしその結果は、気休め程度の量の抗うつ薬を処方されただけで終わりだった。薬を飲んでも特に効果を感じることはなく、自己診断で早々に通うのを止めた。 実際、私は精神的な病ではなかったと思われる。単に対人関

[rAdio]

『自分と境遇が少しでも異なると、そこがどうにも目についてしまって、本当は同じ無能者として共感しあえるはずが、つい敵視してしまう』