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遠い色
焼け付くような春だった。開いた窓から吹き込む風が褪せた空をさらう。肩で切り揃えた髪が揺れる横顔は... 焼け付くような春だった。開いた窓から吹き込む風が褪せた空をさらう。肩で切り揃えた髪が揺れる横顔は鮮烈で、眼差しの先に火傷のような春が宿る。振り向く彼女は微笑んで、指で作ったカメラのシャッターを切った。死ぬほど焦がれた色を見た。気のせいだ。 紙と粘土と油、木製家具に染み付いたにおいが漂う。時間を重ねて出来た傷と汚れだらけの工作台の一つには、絵の具とスケッチブックが乱雑に広がっていた。その横に立てられたイーゼルに、塗り始めたばかりのキャンバス。その前に座る僕、灰塚琥珀の視線の先には、窓辺から外を見る横顔があった。頬の柔らかさと顎先の凛とした線が、外の明るさに照らされて白く浮き上がる。肩の上で踊る毛先まで柔らかく光を帯び、姿勢が良くすらりと伸びた背も、白い手脚も霞んだ景色に溶け込んだ。目尻が緩やかに上がる切れ長の目には窓越しの空と雲が映り込み、ふと細まってこちらに視線を寄越して笑った。 甘条愛。