『ペスト』がいきなり売れ出したということで、集英社の伊藤さんからカミュ論の旧稿をウェブに上げたいという提案を頂いたけれど、これがとてもそのままではお目にかけられるようなクオリティではない。その時にHDの筐底から「こんなもの」が出て来た。たぶん1995年くらいに大学のリレー講義の一部で、「20世紀の倫理」というのを3回くらい担当したことがあって、その時に作ったノートである。そのあと大学の紀要に載せたのだけれど、単行本には採録されていないと思う。カミュ論の部分はのちに改稿して『ためらいの倫理学』という論文になって、同名の論集に収録されている。前半の「倫理についての思想史的概説」は学生向けに書いたので、たいへんにわかりやすい。 1・倫理なき時代の倫理 神戸の小学生殺人事件のあと、あるトーク番組で「なぜ人を殺してはいけないんですか?」と発言した中学生がいて、物議をかもしたことがあった。おそらく、彼