2015年7月に言語科学会第17回年次国際大会が大分県の別府であったので、行ってきました。会員ではなかったのですが、ロンドンのキングズ・カレッジのF・ハッペ教授を招いて、基調講演とシンポジウムが行われたので、それを目当てに行ったわけです。ハッペ氏は言わずと知れた自閉症スペクトラムの専門家で、『自閉症の心の世界』という邦訳書もあります。基調講演は「自閉症スペクトラム障害において言語は認知機能の低さや違いによってどのように影響を受けるか」(How is language affected by cognitive deficits and differences in Autism Spectrum Disorder?) というものでした。 1. はじめに 以前は自閉症の中心問題は言語の障害だと考えられていたが、今日では社会的コミュニケーションに焦点が当てられており、統語論、形態論、音韻論では