僕はホットケーキが好きだ。どのくらい好きかというと、市販のホットケーキミックスを使わず、自分で調合した粉を使い、焼く。何度も何度も試作を重ね、より良い調合を求めた。僕は理系だから、なんて森博嗣みたいなことは言わないけれど、僕にとってホットケーキ作りは実験だった。 田舎から訪ねてきた妹が、ホットケーキの調合に熱を上げる僕を見て「お兄ちゃん、ホットケーキ作らずに就職活動した方がいいんじゃないかしら……」と慎ましく言った。僕はその言葉が全く正しいと思った。次の日、ホットケーキを作ろうと思ったが、たまごが冷蔵庫に無かった。「たまごがなけりゃホットケーキが作れないじゃないか!」僕は憤慨したが、妹は無視して眠りについた。朝、綺麗に焼き上がったホットケーキを見つけた妹はもう何も言わなかった。 夜中にスーパーサカエに言ってたまごを買ってきてまでホットケーキを焼いた僕に何も言ってくれなかったことが悔しかった