0.「序論」 ※『ico』論のみが目的の人は読み飛ばし推奨 作品を造り込むタイプの作家にとって、「すごく共感できました!」という感想は、褒め言葉ではないく、むしろ貶し言葉の部類に入る。このタイプの作家たちが目的としているのは読者を感動させたり、悲しませたりといった単純な感情操作ではなく、感情操作ができるのは当たり前のこととして、その上でどのような物語を構築できるかということだからである。彼らにとって読者の感情を操ることなど朝飯前であり、単純に楽しい物語や哀しい物語を書くのは健全な男子にヌードグラビアを見るがごとき行為なのである。ただの生理現象なのだ。ただ読者の共感だけを求めるテクストなどエロ本も同然、誰にだって書ける。彼らはそう思っている。 では、彼らがそう考える理由、根拠は存在するのだろうか?「これを書けば読者を悲しませることができる」「これを書けば読者を感動させられる」というよう