朝永振一郎は原子核物理学の傑出したリーダーの一人であり、また、ノーベル賞受賞者として戦後の基礎科学研究振興のキーマンでもあった。本書では、朝永がそうした立場から科学の「原罪」という認識を説いた8編、および、原子力開発史の貴重な資料でもある座談3編、計11編を、特に3.11後に読み返すねらいで精選した。 第I部には、原子力の提起する問題を中心に、朝永が科学と現代社会の関係の異常性を真率に論じた随筆・講演録を収めた。第II部には、核廃絶を求める声明やパグウォッシュ会議に関する論説を収録。 これらは、20世紀を代表する物理学者が絶えざる省察によって到達した科学論・科学者論であると同時に、科学が原子力というパンドラの箱を開けた時代の苦悩の証言でもある。 第III部の座談3編は、原子力開発の最初の岐路に立った50年代の科学者らの姿を映し出す貴重な実録である。3.11の震災後に噴き出した、日本の原発産