Back Index Next 「ようこそ、死の都へ」 そういって微笑むオルフェ殿下は、この世のものとは思われないほど美しかった……。 あたしは今、この日記を故国のことばで綴っている。 この国でこれを読むことができるひとがいるとすれば、女公爵エリスだけだ。 だから、彼女にはあたしのしようとすること、またはしようとしてできなかったことがわかるかもしれない。 もちろん、あたしはそのことをエリスに知られたくない。 それなのにこんなことをここに書いているのは、あたしがエリスにだけは嫌われたくないからだ。エリスにだけは、あたしのことを理解してほしいから……。 エリゼ公国は人口10万にも満たない小さな国だ。 首都でさえ、5万とひとがいない。8年前の黒死病蔓延で、都市民の四分の一が死んだという。 そのときの被害でもっとも悲劇的だったのは、エリゼ公国の世継ぎの公子が亡くなったことだろう。頼りの長男を失った