<活字を楽しむ> (田島公・編 笠間書院3200円(税別)) 「春はあけぼの」。東山の山際(やまぎわ)を眺めていると「枕草子」の書き出しが心に浮かんでくる。「男女が一時を共にした翌朝の光景とも思えるでしょう」。学校の授業で先生が雑談まじりに語っていた思い出がよみがえる。 本書で東京大名誉教授の五味文彦さんは「枕草子」で清少納言が逢瀬を過ごしたむつまじい男の翌朝の様子を描いた話もその後の段にあることから「春は曙(あけぼの)」の形式と重なってくる、とし「春の風景は逢瀬の後の景色と見ることができるでしょうか」とする。 旧公爵の近衛家の名宝10万件を収蔵する歴史資料館「陽明文庫」は、京都市の西北、右京区の宇多野に建つ。1938(昭和13)年に29代当主で当時の首相、近衛文麿が財団法人を設立。「枕草子」や、世界記憶遺産に登録された藤原道長自筆の「御堂関白記」(国宝)など奈良・平安時代から近代まで宮廷