「魔がさした」ーー世間を震撼させるほどの大事件を起こした人物が、このようにコメントしたことを聞けば「何を寝ぼけたことを」と思うのが普通だろう。だが、昨今のように専門や嗜好といった圏域が高度に細分化した世の中において、同質の集団による無菌状態、あるいは無法地帯を作り上げることなど容易なことである。たとえそのような状況下にあったとしても、人は清廉潔白で居続けられるのか。 本書の「魔がさす」には、空虚な自信を容易に打ち砕くようなリアリティがあった。これは僕の話なのかもしれないし、僕の周囲にいる隣人の話なのかもしれない。 旧石器を次々に発見したゴッドハンド 2000年10月に発覚した旧石器捏造事件については、ご記憶の方も多いだろう。当時、論争の巻き起こっていた旧石器時代の存在をめぐり、在野の考古学研究者・藤村新一は次々と旧石器を発見し注目を集めていた。 藤村の行く先々で次々に前期旧石器が出土し、「
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