実験用エンジンの前に技術将校と立つ一色尚次さん(中央)。後方は実験所に隣接していた気象観測用の建物=一色さん提供 第2次大戦中に旧日本軍の陸軍航空技術研究所が、長野・岐阜県境の乗鞍岳(3、026メートル)山頂近くに建てた実験所を前身とする「乗鞍山荘」が今秋、老朽化などで解体された。高度約1万メートルを飛ぶ米軍のB29爆撃機に対抗する戦闘機のエンジン改良を極秘に進めた場所で、軍が造ったアクセス道路が今の乗鞍スカイラインのもとになった。本土防空に向けた歴史の一舞台が消えたことを惜しみつつ、平和への願いを新たにする人も少なくない。 実験所は岐阜側の畳平(標高約2700メートル)に一部二階建てで建設。空気の薄い高高度を飛ぶため過給機(ターボチャージャー)を備えたエンジンの開発が目的で、1944(昭和19)年5月ごろから、約80人の技術将校や学生らがグループごとに試作エンジンとともに運ばれ、10日