20年ほど前、坂本龍一のピアノ・ソロ・コンサートを聴きにいった。当時の日本は、「三共リゲインEB錠」のCM曲「energy flow」が人気を集めた後。坂本氏はコンサートのなかで、これも自身の作曲である「サントリー ウイスキー 山崎」のCM曲「Yamazaki2002」を例に出して、なぜ同じように作った曲がヒットになったり、ならなかったりするのか不思議だということを語っていた。 『君の名は。』(2016年)で、記録的な大ヒットを飛ばすことになった新海誠監督も、たしかに方向性を大きく変えたとはいえ、社会現象といえるほどの大反響を生み出すことになった結果について、公開当時、少なからず不可解さを覚えたのではないだろうか。大きな成功に喜ぶ一方で、『君の名は。』がここまで人気を集めるのならば、自身の過去作にもっと観客が入ってもよかったのではないかとも、おそらくは考えたはずだろう。 日本の劇場アニメが
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