6月8日。 宿泊していた新宿のホテルを10時にチェックアウトした後、遅い朝食を食べ、紀伊國屋で少し本をあさる。その後、CDを買うため秋葉原に到着したのが1時50分頃。 そうしたら、えらい騒ぎになっていた。 最初は何か分からず、「交通事故でも起きたのか」と思っていたのだが、それにしては報道のヘリが飛び回っていたり、野次馬も多い。そのうち、妻から「今、秋葉原で通り魔が出たってニュースでやってるよ」というメールが届いた。 本屋に寄らずに秋葉原に直行していたら、事件に遭遇していたかもしれない。 いや、僕が通り魔に刺し殺されていた世界も、きっとどこかにあるに違いない。 SF作家ラリイ・ニーヴンの短編集『無常の月』(ハヤカワ文庫)の中に、「時は分かれて果てもなく」という短編が収録されている。 パラレルワールドの存在が実証された世界で、原因不明の自殺や無差別殺人事件が続発する。事件を捜査していた刑事は、