(文学部 高宮利行) 音読、朗読そして黙読 今日わたしたちが読書するとき、よほどのことがない限り、開いたページの本文を目で追って理解するだろう。つまり視覚を用いて文意をくみ取るわけだ。わが国の都会に住んで、電車やバスを使って通動する人々の中で、座席にありついたしあわせ者は新間、週刊誌、そして文庫本や新書判を手にして読む。満員にもかかわらず、吊革につかまってでも読書する人だっている。しかし、そこで間違っても、本文を声高らかに音読するなどという手合いはいまい。視覚とともに聴覚まで動員して音読するという、こういった環境ではタブーとなつているからだ。もしこの社会のルールを破ろうものなら、白い日で見られるか、君子危うきに近寄らずとばかりに、人々はできるだけ離れていくであろう。 朝夕の通勤電車で展開するこういった毎日の読書習慣が、そのまま家の中に持ち込まれるのもしごく当然だ。食卓で、あるいは居