勝海舟の父親・勝小吉の自伝『夢酔独言』より。 慶応四年(西暦1868)、江戸・薩摩屋敷にて、新政府軍の江戸総攻撃を止めさせるため、西郷隆盛との交渉に臨む勝海舟。 その46年前、海舟の父親・勝小吉(21歳)は、海舟を身籠る妻から引き離され、檻に入れられていた。理由は、江戸で喧嘩三昧の悪行を重ねた挙句、遠州掛川まで家出して勝家を潰しかけたから。 教科書に載っている息子より危険で激しい(かもしれない)父親の物語、スタートです! 冒頭のくだりは、有名な勝海舟と西郷隆盛の江戸無血開城に至る会談の場面です。 一連のシーンの描写は、勝海舟の発言をまとめた本『氷川清話』の一節を元にしています(引用ははやおきによる現代仮名遣い)。 当日おれは、羽織袴で馬に乗って、従者を一人連れたばかりで、薩摩屋敷へ出掛けた。まず一室へ案内せられて、しばらく待っていると、西郷は庭の方から、古洋服に薩摩風の引つ切り下駄を履いて