アケメネス朝ペルシアやローマ帝国、漢王朝などの古代巨大帝国が生まれ、繁栄した要因は、その人口や統治機構などといった国家それ自体の性質ではなく、馬の操作性を向上させたあるイノベーションだった──進化人類学者のピーター・ターチンが、人類の膨大な歴史をデータで紐解く手法とともに解説する。 イノベーションの波が地球全土の人間社会に押し寄せ始めたのは、およそ3000年前のことだ。それからの1000年間で次から次へと新しいテクノロジーが現れ、それらは人間の歴史に劇的な変化をもたらすこととなった。 この時代には、ハミと頭絡(とうらく)によって馬を操る技術が向上し、鉄の加工技術がユーラシア全土に広まった。それにより、頑丈で安い武器や防具の製作が可能になり、クロスボウやカタパルトのような、遠距離から殺傷する新しい方法が登場したことがわかっている。全体として、戦争でより多くの死者が出るようになったのだ。