米共和党のドナルド・トランプ前大統領が演説中に銃撃された事件を受け、米マサチューセッツ大学ローウェル校の犯罪学・法学の教授、アリー・パーリガーがメディア「カンバセーション」のインタビューに応じている。 パーリガーは、銃弾があと少しでもずれていれば、米国で内戦勃発の可能性もあったと指摘しているが、その理由とは?
ドナルド・トランプ前大統領の暗殺未遂事件に使われた銃弾の軌跡を、米紙「ニューヨーク・タイムズ」の写真家が捉えていたと同紙が報じている。トランプの頭部を弾丸がかすめた決定的瞬間の写真だ。 同紙の取材に応じた元FBI特別捜査官のマイケル・ハリガンは「発射物による空気の変異を示している可能性がある」、「耳をかすめるには角度が低いように思えるが、銃撃犯が複数発の弾丸を発砲したとすればありえない話ではない」と述べている。 撮影したダグ・ミルズは1秒間に最大30フレームの画像を撮影できるソニーのデジタルカメラを使用しており、1/8000秒のシャッタースピードで撮影していた。 犯人の男性はAR-15型自動小銃を使用していたとされる。ハリガンによればAR-15の弾丸は秒速3200フィート(約975m)で、シャッター速度が1/8000秒であればシャッターが開いている間に4/10フィート(約12センチ)飛ぶこ
コンピュータが全人類の知能を超える「シンギュラリティ(技術的特異点)」が2045年にやってくると予見した、発明家のレイ・カーツワイル。 テック楽観主義者と呼ばれる彼は、昨今のAIに関する議論について「大事なことを見落としている」と英誌「エコノミスト」に書く。その理由とは──。 AIが実世界にもたらす3つのインパクト 今日産まれた子供たちが幼稚園に入るころには、科学から創作にわたりあらゆる認知的作業において、おそらく人工知能(AI)が人間の能力を超越しているはずだ。 2029年までに我々はこうした汎用人工知能(AGI)を手にすることになるだろう──私がそう初めて予言した1999年、ほとんどの専門家は私が小説家にでも鞍替えするつもりなのかと笑ったものだ。 だが、ここ数年で目覚ましいブレイクスルーが何度も起こり、いまや多くの専門家が、我々はもっと早くAGIを手にすると考えている。当時は夢のような
哲学者であり経済思想家の斎藤幸平が提唱する「脱成長」理論は、日本やヨーロッパで大きな注目と支持を集めた。しかし、米国では強い反発を受けており、学術界からもさまざまな批判の声が上がっている。 【画像】米国で強い反発を受ける「斎藤幸平の脱成長コミュニズム」を、米誌が真剣に検証してみた 米誌「アトランティック」が、斎藤本人や米国の学者たちに話を聞きつつ、この非現実的に思われる理論がなぜこれほど人気なのか、実際にはどれほど実現可能なのかを検証し、その本質を探る。 「クレイジーなアイデア」自分がおかしいやつだと思われていることを、斎藤幸平は自覚している。それこそが大事なポイントなのではないか、と最近ニューヨークを訪れたこの日本人哲学者は私に語ってくれた。 「たぶん、ショックを受ける人も多いでしょうね」と彼は言う。「このクレイジーなやつは何を言っているんだ? って」 そのクレイジーなアイデアというのが
演説が長引くにつれ、人々の視線はスマホ画面へと逸れていった。インスタをスクロールする10代の若者たち。ガールフレンドにメールを送信する男性。そして、グループ初の女性リーダーが演説中だというのに、スマホに群がりサッカー中継を観戦する男性たち。 どこにでもあるような、ありふれた光景だ。だが、これが起きているのは、地球上で最も隔絶された地域の一つにある、先住民族の集落なのだ。 マルボ族は長年、アマゾンの熱帯雨林の奥地を流れるイトゥイ川沿いに、何百キロにもわたって点在する共同小屋で暮らしてきた。彼らは独自の言語を話し、森の精霊とつながるために幻覚剤のアヤワスカを飲み、クモザルを捕まえてスープの材料にしたりペットにしたりする。
宗教を信仰する10代の若者は、世俗的な若者よりも幸せであることを示す研究が注目を集めている。 近年、米国では若者のメンタルヘルスの危機が度々報じられている。だが、信仰心の篤い10代の精神状態は、この社会的傾向とは異なり、安定しているという。 一体なぜか? 米紙「ボストン・グローブ」が掲載した、米国の高校生を対象とした「モニタリング・ザ・フューチャー」のデータ(1979〜2019年)によると、「信仰心の篤い10代」と「世俗的な10代」のメンタルヘルスに顕著な差がみられ始めたのは2010年以降だ。 同調査では、対象者を「世俗的な進歩派(リベラル)」「信仰心に篤い進歩派(リベラル)」「世俗的な保守派」「信仰心に篤い保守派」の4つのグループに分けており、そのデータは2010年以降、ほぼどのグループも孤独や不安、無価値感、憂鬱をより強く感じるようになったことを示している。
世界に広がる少子化 30年ほど前、東アジア諸国の政府には、女性が身体的に妊娠可能な年齢になったことを喜ぶ理由があった。当時、韓国では、女性がそれまでと同じように行動すれば、出生率が平均1.7人まで下がると見積もられていた。1970年には、出生率は4.5人だったにもかかわらずだ。 東アジア全体で、政治家たちは10代の妊娠を劇的に減少させることに成功した。この一世代のうちに、出生率は驚くほどうまく減少した。だが、それはあまりにもうまくいきすぎた。出生率はいまなお下がり続けているのだ。 現在、妊娠可能な年齢の韓国人女性が、上の世代と同じように行動したと仮定した場合、生涯に産む子供の数は、0.7人だと見積もられている。 2006年以降、韓国政府はGDPの1%に相当する、およそ2700億ドル(約42兆円)を少子化対策に費やしている。それは子供がいる世帯への減税やマタニティケア、さらには政府後援のお見
2023年、ジョナサン・マイヤーはオランダの裁判所から、新たな家族への「精子提供禁止」の判決を受けた。世界中で自らの精子を提供し、生まれた子供は550人以上だとされている。仏誌「ル・ポワン」の記者が、いまは木彫職人として静かに暮らしているというマイヤー本人を訪ねた。 オランダ、ハウダの小学校に勤めるナタリー・ダイクドレンスは、似通った顔の生徒たちを見るたびに、ある疑問が頭をよぎる。彼女の息子に似た子もいる。「この子もジョナサン・マイヤーの血を引いているのではないだろうか」 同国第二の都市ロッテルダムから20kmほど離れたこの街は、緑豊かで、新しい家々の前にはハイクラスのテスラ車が並ぶ。39歳のナタリーと、パートナーのスザンヌ・ダニエルズ(43)は、景観と静けさを求めて数ヵ月前にこの街に越してきた。彼らは二人の子供をここで育てている。15歳のエリザは初婚の時の子供で、プラチナブロンドの髪を持
1972年浙江省温州市生まれで、英国オックスフォード大学の社会人類学の元教授で、現在ドイツのマックス・プランク社会人類学研究所員である項飆(シャン・ビャオ)。気鋭の人類学者である彼が、不景気のなかにある現代の中国の若者たちが何を考えているのか、また、今後の中国にどのような影響を与えるのかを語る。 ──中国の若者は景気後退にどのような影響を受けているのでしょうか? 若者たちは高齢者に比べてはるかに大きな影響を受けています。高齢者たちは過去40年間の高度成長の恩恵を受け、貯蓄や不動産を持っているような人々です。 一方、いまの新卒の若者たちは、将来に大きな期待を持って育った世代です。彼らにとって現実とのギャップは非常に厳しい。仕事もキャリアアップの機会も少ない。また、就職できたとしても、IT業界のように、企業は激しい競争を繰り広げているため、条件がより厳しくなっているのです。 もちろん、社会集団
非対称情報のもたらす影響を探求し、2001年にノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ。 米国で4月に新著『自由への道─経済学と良い社会』(未邦訳)を出版し、現在の米国の経済システムと、それを生んだ政治イデオロギーを分析した。米国はどう間違えたのか、英紙「フィナンシャル・タイムズ」が聞いた。 ついに時代が追いついた ジョセフ・スティグリッツから話を聞く前に、彼のチームの一員から、何を質問しようとしているのか聞かれた。ノーベル経済学賞受賞者は、準備を大切にしているのだ。スティグリッツの批評家たちは、「過去30年間、何を準備してきたのか」と笑うかもしれない。彼は自由市場について左翼的に批判してきたが、それはいまでは自然なものになったのだろうか。 スティグリッツは、1995~97年にビル・クリントン政権下の大統領経済諮問委員会委員長を務め、1997~2000年に世界銀行のチーフエコノミ
「ŌHARA-JUKU」なるものを営むその男は、「不可能なことでも提供する」という。フランス誌「フィガロ・マガジン」の記者がその実力を目の当たりにした。彼らが訪れた場所、それは墨田区の「聖域」相撲部屋や、浅草の地下にある占い館だけではない。 隈研吾の美学を知る 「東京にカオスをもたらしたい」──完璧な英語でそう話す男の顔には、長年のキャリアを感じさせる皺が刻まれていた。世界的スター建築家、隈研吾(69)は穏やかに語る。パリにある故高田賢三の自邸の改装を手がけたのも彼、東京の国立競技場も、大成建設、梓設計と組んだ彼の仕事である。 青山にある隈の事務所は、いたるところに図面台が置かれ、構想の過程を示す殴り書きのクロッキーが散乱している。この創造的無秩序にほっとさせられる。もっとも偉大な建築家であっても、消しゴムと鉛筆を使うのだ。 「江戸時代、日本の建物はすべて木造建築で、高さは3m以内、狭い道
行方知れずの子供たち 生還者たちはいまもフラッシュバックに悩まされ、その意味において、過去に閉じ込められたままだ。若いシリン・カレフが顔を隠して証言するのは、いつの日か、ISが別の形で復活するのを恐れてのことだ。 彼女の話は、2014年8月4日の恐怖の夜に、ヤジディ教徒たちが暮らす土地がISの手に落ちるところなど、ほかの女性の話と重なる部分が多い。話の脈絡が追えなくなるときもあったが、話の核となる部分は、子供と引き離されたときのトラウマがいまも頭を離れないことだ。 「いちばんつらかったのは、二人の子供と引き離されたときでした。子供たちはイラクへ、私はシリアへ連れていかれました。シリアにはハーレムがあり、女性が売買される市場がありました」 シリンはシンジャール近郊のドメスという場所で、二人の子供とともにISに捕まった。妊娠中だった彼女は、ランブシ村に連れていかれ、そこで3日過ごした後、イラク
法、その一。「いかなる女も、配偶者あるいは所有物、召使いでないなら、性交は合法でない」 法、その二。「女が召使いや奴隷になるのは戦争を通じてである」 法、その三。「ジハードで戦った男が女性捕虜を手に入れるのは、司令官から与えられたときか、買ったときである」 いまから10世紀前の征服活動のときに書かれたこの中世の文章には、戦利品として獲得した性奴隷の正しい取り扱い方について、もっと具体的な記述もある。たとえば性奴隷の「利用」開始時期は、月経を1回見送ってからだとされている。獲得した性奴隷が妊娠している場合は、出産後だ。いまから見れば鬼畜の所業だが、これがかつてのイスラム帝国における「宗教的な立場から出された見解」だった。 IS(いわゆる「イスラム国」)がイラクとシリアに支配領域を持っていた2014年から2019年までの時期、その支配領域では性奴隷の拉致と酷使が横行したが、それを正当化する拠り
スラヴォイ・ジジェク(75)にインタビューするのは、筆舌に尽くしがたい体験である。哲学者、精神分析家、文化理論家、政治活動家、ロンドン大学バークベック人文学研究所インターナショナル・ディレクター、そしてスロベニア共和国の元大統領候補である彼との会話では、一つのテーマから別のテーマへ次々と飛んでいく。だから、対談者はなんとかして置いてけぼりにされないようにしなければならない。ジジェクは、ユニークで予想がつかないのだ。 「剰余享楽」とは ──あなたは『為すところを知らざればなり』(※原題副題は「政治的要因としての享楽」)、そして『快楽の転移』をすでに書いています。そして今回、『剰余享楽』を発表しました。なぜ、このテーマに関心があるのですか? 戦争や人種差別、そのほかの多くの恐怖をめぐって何が起きているかを理解するためには、まさに享楽に注意を払わなければなりません。私は、享楽を「喜び」としてのみ
男女雇用機会均等法の施行から約30年。他の先進国に遅れを取りつつも、日本の政府組織や民間企業では、男性優位の職場文化に変化が見られるようになった一方、まだまだ多くの課題が残されてもいる。外務省や大手企業で働く女性たちの現状を、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が取材した。 男女雇用機会均等法が施行された翌年の1987年、のちに日本の皇后となる女性が外務省に入省した。彼女は3人しかいない女性の新人外交官のひとりだった。当時は小和田雅子という名前だったこの女性は深夜まで働き、日米貿易摩擦の対応などにあたった北米二課で、華々しいキャリアを築いていた。 だが、彼女はそれから6年も経たないうちに退職し、当時は皇太子だった現在の天皇、徳仁と結婚した。 その後の30年で、外務省の状況は大きく変わった──そして、女性たちの置かれた状況も。2020年以降、新人外交官の半数近くを女性が占めるようになり、多くの女性
元受刑者は犯罪歴が労働市場で不利になるため、出所後に起業を選ぶことが多い。 だが、過去に犯罪を犯した人へのステレオタイプを払拭し、彼らに多くの選択肢を与えることは、経済にもメリットをもたらす。そう語るのは、米ペンシルベニア大学のビジネススクール、ウォートン校のデイモン・フィリップスだ。 労働力不足が深刻化する日本でも、必要とされる問題について考えよう──。 出所後の起業率が高い理由 デイモン・フィリップスは、出所後の元受刑者の起業率が一般人と比べて5%高いことを発見した。起業後の再犯率も低くなることがわかった。 とりわけ、出所後の黒人男性の就職には高い壁が立ちはだかるため、彼らは起業することが多い。彼らにとっては、普通に働くよりも起業するほうが高収入を得るチャンスが高くなるのだ。 これは、犯罪歴のある就職希望者を差別する雇用者にとって、そして刑務所内の囚人たちを救うために予算を割いている政
日本人の母と英国人の父を持つ山崎エマは、程よい距離感で日本社会を見つめ、ドキュメンタリー映画として記録してきた。彼女がカメラを向けるのは、教室の掃除に励む小学生や血のにじむような練習に耐える高校球児といった教育現場だ。 そうした日本特有の厳しいしつけや伝統が社会に秩序をもたらす一方、そこには代償もあることにスポットライトを当てる山崎に、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が話を聞いた。 人間ピラミッドの思い出 ドキュメンタリー映画監督の山崎エマ(34)には幼少期の忘れられない経験がある。自分は膝にひどい擦り傷を負い、同級生は骨折する羽目になった人間ピラミッドだ。 大阪の小学校で6年生のころ、毎年恒例の運動会で組み体操を披露するため、同級生らと何週間も前から7段の人間ピラミッドをつくる練習をした。小さな体から血も涙も流れたが、本番で成功させた達成感は計り知れず、それは「私が粘り強い努力家だと自負で
ヨハン・ノルベリ(50)は根っからの楽観主義者で、その主張を裏付ける論拠を持ち合わせている。古典的自由主義とグローバル化の熱烈な擁護者であるこの歴史学者は、ある意味、心理学者のスティーブン・ピンカーの系譜に連なり、「私たちは最善の世界に生きている」と主張する。 スウェーデン人のノルベリは、多くの人にとってシステムを推進する原動力である「利益の追求」を、「俗悪」なものだと考えている。彼が関心を寄せているのは、もっと「美しい」もの、つまり、より良い世界を創ることなのだ。 米ワシントンにあるシンクタンク「ケイトー研究所」のシニアフェローを務めるノルベリは、『資本主義宣言』(未邦訳)という挑発的なタイトルをつけた新著で、「読者の注意を文化戦争から逸らし、私たちの未来にとって重要な問題へと引き戻す」ことを目指している。スペイン紙「エル・パイス」が彼にインタビューした。 ──あなたは、社会正義の実現に
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