「皆が同じ物語を信じることができれば、規範に従って大規模な範囲で協力し合うことができる」と、物語の重要性を説いてきたユヴァル・ノア・ハラリ。だが、彼は多くの人が気候変動の「物語」を信じているにもかかわらず、遅々として世界規模の対策が進まない理由に“敵”の不在を挙げる。 イスラエル人歴史学者で哲学者のユヴァル・ノア・ハラリ(45)は、2015年にアメリカで出版した著書『サピエンス全史』がベストセラーになったことで知識人のトップに躍り出た。そしてそれに続く『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』と『21 Lessons:21世紀の人類のための21の思考』で、その地位をゆるぎないものにした。 ハラリの思考の軸になっているのは、「虚構」を信じる素質が私たちにはあって、それが人間社会の大半を動かしている、という考え方だ。この虚構の力は、たとえば神や国家といった、人類共通の想像力における存在に