国府田敬三郎は祖国から遠く離れた地で米作りを始め、「カリフォルニア米の帝王」と称された。その敬三郎の意志を引き継ぎ、有名シェフからも愛される米を代々作り続けてきたコウダ農場だが、ついにその地を手放すという決断を下した。 8月に水の引き込みが切られると、カリフォルニア州のサウス・ドス・パロスにある水田は緑から黄金色へと変わる。コウダ農場を経営するロビン・コウダとロス・コウダの姉弟は、だんだん水分が抜けていく稲を手にとり、最適な収穫時期の頃合いを計る。 いまから97年前にカリフォルニアで家族経営の米作りを始めたのは、2人の祖父の国府田敬三郎(こうだ・けいさぶろう)だ。コウダ農場は新品種「コクホウローズ(國寶ローズ)」を開発し、1960年代に初めて売り出した。世代を問わず、多くの料理人がこの米国育ちの日本的な米に感銘を受け、さまざまな料理を作ってきた。 だが今秋、コウダ家の農場から新米が出荷され