全卓樹「ピーター・ターチンの数理的歴史学」――『不和の時代(仮)』(ピーター・ターチン著、青野浩ほか訳、今秋刊行予定)に寄せて ただいま晶文社では、コネチカット大学教授ピーター・ターチン氏の著書『不和の時代(仮)』日本語版の刊行準備を進めています(2022年秋刊行予定)。 ターチン教授は、理論生物学者として研究をはじめましたが、近年では歴史動態を数学的にモデル化する学際領域で注目を浴びている複雑性(複雑系)科学者です。 『不和の時代(仮)』は、その彼が数理的歴史学の手法によってアメリカ史を大胆に解読した一冊です。2020年代アメリカにおける騒乱状況を正確に予言した著作として大きな話題を呼びました(原著刊行は2016年)。 本書は、人文・社会科学の刷新を予感させるだけでなく、人類が平和な未来を築くためにも重要な意義をもちうる仕事ですが、多くの人にとってきわめて難解であることも事実です。 そこ