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ブックマーク / atalante.exblog.jp (14)

  • 呪われた部分へと通じるあからさまな芸術信仰の表現 | L'ATALANTE

    アンドレイ・タルコフスキー監督の遺作には、自らの世代に対する(自己)否定と、次に続く新しい世代への全幅の信頼というメッセージが託されているでしょう。しかし、そのような主題が力強く作品を支配して、そのメッセージが観る者の心を揺さぶるものになっているかと言えば少々疑問で、...というのも、あのストイックとも過剰とも言えそうな映像には、そのような主題よりも前面に立って全体のトーンを支配しているものがあって、それはたぶん、「芸術」に対する信頼と、「芸術」となら心中しても良い、という芸術崇拝の姿勢のようなもので、レオナルドの「東方三博士の礼拝」に描かれた生命の木を大写しにしながら、そこにバッハ「マタイ受難曲」のアリア「憐れみ給え、我が神よ」を流すという、そんな大文字かつ究極のヨーロッパ的知性と芸術の痕跡を刻むかのようなオープニングひとつ取っても、そこには、シンプルに「芸術最高!」といった強靭な想いが

    呪われた部分へと通じるあからさまな芸術信仰の表現 | L'ATALANTE
    gauqui
    gauqui 2012/05/25
    「透けて見える「芸術最高!」」
  • 男たちの想像力が及ばない話 『灼熱の魂』 | L'ATALANTE

    賛否はともかく、やたらと濃い感想の数々を昨年の段階で聞き及んでいたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『灼熱の魂』(INCENDIES 2011)を、年明け来阪間もなく劇場でキャッチしました。 -- 「馬鹿と気狂いは真実を言う。」(ニーチェ) 真実の価値と、「死を前にした人間はウソをつかない」という劇中のセリフについて考えてみる。...似たことは良く語られるし、アインシュタインも、俗世におけるエゴからの解脱の困難を次のように語ってました。 -- 「我々が正直になるのを許されているのは、生まれる瞬間と死ぬ瞬間だけだ。」 真実は、それが指し示すものがどのようなものであれ、揺るがない価値を持っているだろう。また、それを知ることは常に尊くて、それは人を自由にするだろう。...とかいろいろ言われるわけですが、けれど一方で、秘密を「墓場まで持っていく」という表現があるように、隠された真実が厄介なものであるのも事

    男たちの想像力が及ばない話 『灼熱の魂』 | L'ATALANTE
  • 1Q82 | L'ATALANTE

    1982年の話。 映画ファンはこの年をどのように振り返るでしょうか? この年日公開された映画を振り返って、ジェームズ・キャメロンが『殺人魚フライングキラー』で、角川春樹が『汚れた英雄』で、それぞれ劇場用長編映画の監督として微妙なデビューを飾ったことを遠い目で思い起こす人もいるかもしれませんし、別の方にとっては『E.T.』と『蒲田行進曲』の盛り上がりで記憶しているかもしれません。また『ブレードランナー』や『U・ボート』といったカルト的に根強い人気作のスロースタートによって記憶する人もいるでしょう。 ちなみに当時小6か中1かだったはずの私にとっては、『伝説巨神イデオン 接触篇/発動篇』とクリント・イーストウッド監督『ファイヤーフォックス』の年だとひとまず言えます。 ジョン・カーペンター監督の『遊星からの物体X』の続編が公開される。...続編というのは正確ではなく、前回舞台となったアメリカ基地

    1Q82 | L'ATALANTE
  • ナイト・シャマランの話をしよう。 - ジョン・エリック・ドゥードル監督 『デビル』 | L'ATALANTE

    M・ナイト・シャマラン原案・製作によるザ・ナイト・クロニクルシリーズ第一弾、『デビル』(DEVIL 2011)を鑑賞。シャマランのアイディアを新鋭のスタッフ&キャストを起用して映画化するシリーズ、今回の監督は『REC:レック/ザ・クアランティン』(Quarantine 2008)のジョン・エリック・ドゥードルです。 私はシャマランのネーム・バリューに引っ張られて劇場に足を運んだ口だけど、ジョン・エリック・ドゥードル監督についてのリサーチはしておこうと事前にレンタルしてきたのが、何を勘違いしたのか『REC/レック2』([REC]2 2009)。...そう、実はスペイン映画『REC/レック』(ジャウマ・バラゲロ&パコ・プラサ監督 [REC] 2007)の米国リメイク版が『REC:レック/ザ・クアランティン』だという事情が理解できておらず、ジョン・エリック・ドゥードルこそがオリジナル『REC/

    ナイト・シャマランの話をしよう。 - ジョン・エリック・ドゥードル監督 『デビル』 | L'ATALANTE
  • MUSIC FOR ・・・ 2011 夏 | L'ATALANTE

  • 印象主義-強硬派 モネと対話してみる | L'ATALANTE

    gauqui
    gauqui 2011/07/21
  • 「神々しい」をめぐる感覚的な話 -- 「フェルメールからのラブレター展」 | L'ATALANTE

    京都市美術館で開催中の「フェルメールからのラブレター展」。 "日人みんな大好き"フェルメールの絶頂期の作品3点を含んだ展覧会であるにも関わらず、平日のお昼時のせいもあってか人出はまばら。青衣の女を独り占めとはいかないけれど、かなりラッキーな方です。 ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer 1632年-1675年)の作品が日の展覧会にかかると言えば、必ずついてくるのが"その他"17世紀オランダ絵画たち。主題の一貫性が意識されて、当時の主に室内風俗画が数多く来日します。それはそれで貴重な対面であるのでしょうし、ファンの方も多いだろうとは察しますが、やはり主役を前に"その他"は全部吹っ飛びます。 私の趣味の狭さを横に置いて言わせてもらうなら、こうして書いている今も脇役たちの記憶がほとんどない。それら諸作品はその場ではそれなりに感心させられても、よほど専門性の高いファンでもな

    「神々しい」をめぐる感覚的な話 -- 「フェルメールからのラブレター展」 | L'ATALANTE
    gauqui
    gauqui 2011/07/21
  • 「デジタルビデオは映画を救済するか?」 に黙する21世紀ゴダールを考える | L'ATALANTE

    ジャン=リュック・ゴダール"最後の長編劇映画(か?)"との微妙な呼び声も高い『ゴダール・ソシアリスム』(Film Socialisme 2010)、もう2ヶ月も前ですが(関西ではこの5月からの公開でした)京都シネマで鑑賞しました。...鑑賞...、したのですが、途中迂闊にも15分程度の意識不明状態に陥ってしまったことをこの場で正直に告白しておきたいと思います。 前日2時間くらいしか睡眠できていないとか、風邪気味でクスリを服用中だったとか、なにか尤もらしい言い訳を探してみるのですが、前日はめずらしくしっかり5時間程度眠り、体調も近頃では珍しいくらい絶好調だったことを、残念ながら合わせて告白しておく必要があります。 「FILM SOCIALISME」(2010) ですので、『ゴダール・ソシアリスム』そのものについてあまり物を言える立場にはいないわけですが、それでも全体の85%程度を観た限りで言

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  • きれいにひと皮むけたアロノフスキーが素晴らしい - 『ブラック・スワン』 | L'ATALANTE

    「ダーレン・アロノフスキーとラース・フォン=トリアーとでは、どちらがよりSっ気が強いか?」 ...といった感じの振りを、以前、サイドバーにリンクさせてもらっているk.onoderaさんところのコメント欄でやりとりさせていただき、宗教観の濃い「神の視点」を感じさせるラース・フォン=トリアーのサディストぶりと、より人間自身に寄り添うダーレン・アロノフスキー......といったニュアンスのコメントをいただいたことがあります。 日国内で時は今、『ブラック・スワン』(Black Swan )と『アンチクライスト』(Antichrist)という形で合間見えているわけですが、上で言われている「神の視点」をもう少し映画的に噛み砕けば、ラース・フォン=トリアーには幾分かのカール・テオドール・ドライヤーの血が混じっており、アロノフスキーの「人間自身に寄り添う」感じを、主に『レクイエム・フォー・ドリームス』(

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  • Paul Klee (2) - 押絵と旅する男 | L'ATALANTE

    京都国立近代美術館で開催中の「パウル・クレー展 おわらないアトリエ」(Art in the Making 1883-1940)に行ってきました。...もう一ヶ月も前の話ですけど...。 稿のタイトルからして、前回(「Paul Klee (1) - 残酷な天使のテーゼ」)同様、今回もパウル・クレーの展覧会の感想そのものとはほとんど関係のないない話になりそうな気配をぷんぷんさせつつ、やっぱり展覧会そのものはちょっと横に置かせてもらって、唐突に、江戸川乱歩の代表作のひとつに「押絵と旅する男」(1929)という短編小説があります。 私は中学生の頃、ほぼ全ての乱歩の著作を読み漁りましたが、中でも、「押絵と旅する男」と「鏡地獄」の2編は、読後の印象が特別強烈だったことを思い出します。乱歩の他の小説が醸し出す奇奇怪怪でおどろおどろしいテイストとは一線を画した、なんというか、もっと普遍的な恐怖とでもいう

    Paul Klee (2) - 押絵と旅する男 | L'ATALANTE
    gauqui
    gauqui 2011/05/16
  • Paul Klee (1) - 残酷な天使のテーゼ | L'ATALANTE

    京都国立近代美術館で開催中の「パウル・クレー展 おわらないアトリエ」(Art in the Making 1883-1940)に行ってきました。 が、展覧会の感想は次回以降に譲って、今回はパウル・クレーの作品の中でも、最も日人好みな「天使シリーズ」について少し書いてみます。 ...が、まずは唐突に、私にはそれらが他人とは思えない二つの天使の画像を並べてみたいと思います。 第3使徒:サキエル(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』より) 詩や絵の挿絵にも使われる愛らしいクレーの天使たちを愛する方には、「グロテスクで意味不明なものと一緒にするな。」とお叱りを受けそうですが、意味不明で何者か分からないというのは質のひとつで、例えば、宮下誠著「越境する天使 パウル・クレー」の中で著者は、可愛いもの好きとして作品の表象を愛好する人々のクレー受容のスタンスを、真っ向から否定することに大きく論点を置いて

    Paul Klee (1) - 残酷な天使のテーゼ | L'ATALANTE
    gauqui
    gauqui 2011/04/13
    無茶なんだけど面白い
  • 時期はずれの特別企画 : 00年代映画ベスト5 | L'ATALANTE

    総括時期に一年以上遅れた以下の「(20)00年代ベスト5」は、映画について比較的コアな話題を共有できる友人とのお酒の席での会話の延長です。 話の結がハッキリしないまま終電が近づいて、「続きはウェブで。ポチッ、」、と、テレビCMのキャッチみたいな終わり方をしてしまったことを引き継いでの記事となります。 ¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨ 1. 『ラスト、コーション』Lust,Caution 色.戒 (2008 中国/アメリカ) 関連記事  そしてアン・リー監督は領を発揮する --- 『ラスト、コーション』 ♯comment リンクした過去記事から、あらためてここで論旨のみ繰り返しておきます。 銀幕に憧れる主人公が引き裂かれるのは、任務への使命感や愛国心や同士への恋心ではなく、他人の人生を演じること(転生欲求)への希求であり、それはそのまま、無名の新人女優(タン・ウェイ

    時期はずれの特別企画 : 00年代映画ベスト5 | L'ATALANTE
  • 阿部和重 「ピストルズ」 | L'ATALANTE

    阿部和重・著 「ピストルズ」。どうにも得体の知れない書をやっと読み終えました。 数ヶ月越しでかなりの時間を要したのは、あれこれ浮気しながら読んでいたせいもあるけれど、そもそも浮気の原因の一端はこの小説の側にあると、阿部ファンの私でも言いたくなる、そんな読み難い小説でした。谷崎潤一郎賞の受賞はひとまずめでたいけれど、今さらコレで?感が否めないのが正直なところ。 --(Bookデータベースより) 「若木山の裏手には、魔術師の一家が暮らしている―」。田舎町の書店主・石川は、とあるキッカケから町の外れに住む魔術師一家と噂される人々と接触する。その名は菖蒲家。謎に包まれた一族の秘密を探るべく、石川は菖蒲四姉妹の次女・あおばにインタビューを敢行するのだが…。そこで語られ始めたのは、一族の間で千年以上も継承された秘術にまつわる、目眩めく壮大な歴史だった。史実の闇に葬り去られた神の町の盛衰とともに明かさ

    阿部和重 「ピストルズ」 | L'ATALANTE
  • プラス思考とそのコストを考える C.イーストウッド監督 『ヒア アフター』 | L'ATALANTE

    どんな話なのかは理解できるのだけど、なぜこんな描き方になるのかがよく分からず、結果、当は何が描かれているのかいまひとつ腹に落ちない...と、クリント・イーストウッド監督作品では珍しくないややこしさが、『ヒア アフター』(HEREAFTER 2010)にもありました。 映画が描いていることを単純にスジだけ追いかけて考えるなら次のようになるだろうと思います。 死者と交信できるという特殊なコミュニケーション能力をもつがゆえに、リアルなコミュニケーションの不全に陥っている内省的な主人公(マット・デイモン)の厭世観が、いくつかの出会いを通じて前向きで積極的なものへと変化していく過程が描かれる。 この主人公の変化は、変革と言えるほど大きいものではなく、決して劇的なものではありません。 劇的ではないというのは、それこそアンビエントのようなドラマ展開そのものを指して言っているのではなく、簡単に書いてしま

    プラス思考とそのコストを考える C.イーストウッド監督 『ヒア アフター』 | L'ATALANTE
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