3月の新刊、ケネス・J・アロー著、村上泰亮訳『組織の限界』より、文庫版解説の一部を掲載します。先日惜しまれつつ亡くなった、20世紀最高の経済学者アロー。そのエッセンスが凝縮された本書の魅力を、『多数決を疑う』などで注目を集める気鋭の経済学者、坂井豊貴氏が解説します。 本書の原著は1974年にノートン・アンド・カンパニーから、邦訳は1976年に岩波書店からそれぞれ公刊された。翻訳はアローと旧知の間柄にあり、東京大学や国際日本文化研究センターの教授をつとめた故・村上泰亮氏による。村上は経済体制論や文明論にかんする著作を多く発表しており、現在、それらは「村上泰亮著作集」(全8巻、中央公論社)にまとめられている。村上は1970〜80年代の代表的な論壇人でもあり、一般にはそこでの活躍で知られている。 しかし村上が、日本語での著作や論壇での活動を始める前の時代に、投票の数理の研究で国際的に高い評価を得
![『組織の限界』解説|ちくま学芸文庫|坂井 豊貴|webちくま](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/1e2f295fd9568e3a42682b3b1c9a62dd222264db/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fchikuma.ismcdn.jp%2Fmwimgs%2Fc%2F5%2F660m%2Fimg_c5bf3b958c31ad2623d1392027b8e00187827.jpg)