冒頭の67ページにわたるロング・インタビュー(聞き手:高橋順一)だけでも読む価値があると思います。私は吉本フォロアですので、たいがいの新刊本は買って読むのですが、基本的には同じことの繰り返しだったりします。それが悪いかと言えば、吉本さんの場合そうではなくて、この人は大切なことは何度でも言うタイプなので、それはそれで面白いのですが、今回のインタビューは違います。 なんか、生々しいんですよね。全学連の同伴者知識人として「一兵卒」として安保闘争に関わっていた頃のこと、丸山眞男、花田清輝、埴谷雄高といった進歩主義的知識人のこと、なぜ吉本さんが「転向論」を書いたのか、そんなこんなが、今だから言いますが的な言葉で語られていきます。 有名な論争に、80年代の吉本・埴谷論争というものがあります。吉本さんが、川久保玲さんのファッションブランド「コム・デ・ギャルソン」のモデルになって、ファッション雑誌に登場し