夜、歩いていると無灯火の自転車が前方からやってきたので、 慌てて避けようとしたが、ハンドルがぶれたのか、俺の足に車輪が接触した。 自転車は乗っていた人間ごと一緒に倒れた。 速度はそんなに出てなかったからあまり痛くはなかったが、なんてふざけた奴だと思い、 「危ねぇだろうが馬鹿!」と怒鳴ってしまった。 よく見るとそいつは女性で、右手に携帯電話をもっていた。 相手の女は「はぁ?」と怒鳴られたのが気に食わないという顔でこちらを睨みつけてきた。 苛立って思わず右腕を掴んで身体を引き寄せて「ふざけるなよ」と恫喝めいた真似をすると、 相手はいきなり「誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」と大声をあげた。 びっくりして相手の腕を放したが、それでも女は叫び続けていて、 どうすればいいか分からなくなった俺は倒れている自転車のカゴのあたりを蹴飛ばして、 「バカ女! ふざけんな!」とまた怒鳴ってから走ってその場を離