2020年はコロナ禍が始まった年として永遠に記憶される年となるだろう。 「密」を避けること。治療方法の見つかっていないそのウイルスから逃れるための唯一の方法がその「密」を避けること、すなわち人と人との物理的な距離を確保することだけだった。 それは建築の基本的な価値観に変化をもたらす。これまでは都市や建築の空間は、例えばイタリアの広場を見るとよくわかるように、そこに集う人間の距離を縮めることを基本的な理念としていたと言っていい。 ところが新型コロナウイルスから逃れるためにはそうした理念とは逆に人間同士が物理的な距離を取るしかない。ならば物理的には距離を取ったとしても、精神的には人間同士の距離の近い空間など可能なのか。 そんな時代を突然受け入れざるを得なくなった我々にとって必要なのはどんな空間なのかと考え始めた時、そこに堀部安嗣を発見する。 そこにあるのは一見するととてもプライベートな空間に見