「3匹ともうちの酒蔵の中で生まれた仔です。我々、酒造りの仕事は秋組の商売といわれていて、寒い時期だけお酒を造ってるんですね。昔は出稼ぎ労働の人が半年間だけお酒造りをして、春になったら地元へ帰って農業だったり林業だったりをして生計を立てるという働き方でした。ところが、一次産業の衰退によって、そういうかたちで仕事をする人がほとんどいなくなってしまったんです。農業従事者の平均年齢が65歳を超えているように、私たちもこのかたちで仕事をしていけなくなることは随分前からわかっていましたので、少しずつ地元の人を雇うかたちに変更して。で、1年間通して社員として働いてもらえるようにしていったんですけど、昔より酒造りの期間が長くなったとはいえ、9月くらいから4月くらいまで。それ以外、酒蔵の中は誰もいない状態になるんです」 ――その誰もいない期間に、猫が出産したんですね。 「どこからか忍び込んだんでしょうね。私