7000以上の島から成る東南アジアの島国、フィリピン。戦前、成功を夢見てこの地に渡った日本人移民の子として生まれ、日本国籍もフィリピン国籍も持たない「無国籍状態」になっている残留2世に、現地で取材した。戦争に翻弄されながら懸命に生き抜いた2世たちの数奇な運命と日本への思いを3回にわたって連載記事で紹介したが、書き切れなかった「物語」を紹介したい。(橋本昌宗) 壮絶な復讐(ふくしゅう)劇 夕食時の室内を照らすランプの油が燃える匂い、「子供だけは助けてくれ」と父が家を飛び出した後、2階で息を潜めていたときの恐怖… フィリピン西部パラワン州の田舎町、リサールで暮らすフリオ・オオシタさん(89)は、日米開戦翌年の1942年6月、父親のマツイチさんが現地の反日ゲリラに殺害されたときの様子を、克明に記憶していた。 その詳細は連載(中)で記事化したが、「悲劇」には続きがあった。 フリオさんに取材した翌日