北健一(ジャーナリスト) 「労働運動を『犯罪』にする国」という副題が示すように、本書は直接には、戦後最大級の労働組合弾圧である関西生コン事件を抉ったルポルタージュである。著者の深くていねいな取材は、関生弾圧を追いながら、「働き手を支えるたくさんのものが、静かに破壊されようとしている」(エピローグ)実態を浮き彫りにし、読み進むうちに背筋が凍る。 本書は、関生支部に加入するふつうの組合員の「小さな話」から始まる。子どもたちを抱えたシングルマザーが自立できる労働条件は、いかに築かれたのか。関生支部を中心とする生コン業界労使の歩みの末に、賃上げも時短もシングルマザーの経済的自立も成し遂げられたことが腑に落ちる。 多くの努力があって、大阪の生コン業者は大阪広域協組に、関連の6労組は関西生コン労組連合会に結集した。そうした大同団結で価格交渉力が上がり、生コン価格は3割がた上がった。増収を、生コン労働者