遠藤がレギュラー奪取に奮闘していた昨冬、旧知のテレビディレクターが偶然リバプールを訪ねていた。観戦のつもりが、予期せぬ密着取材が始まって――移籍後の初タイトルがかかるカラバオカップ決勝(日本時間2月25日24時)を前に、日本代表キャプテンがこぼした本音と素顔を、全3回にわたってお届けする。
知人女性への強制性交の疑いで書類送検され、嫌疑不十分で不起訴処分となった西武・山川穂高内野手に対して、西武球団は9月4日に「無期限で公式戦への出場停止」とする処分を発表した。 「不起訴処分になったとはいえ、これだけ世間を騒がせた。主力選手としての責任ある立場ということもあるので、球団としては今回の事態を重く見て、しっかり処分すべきだと判断した」 都内で開かれた12球団実行委員会後に西武・飯田光男球団本部長が取材に応じ、処分に対する球団の考えをこう明らかにしている。 「不起訴処分」を受け、球団としてペナルティー 山川は昨年11月に港区のホテルで20代の女性に性的暴行をしたとして、女性側から被害届が出された。警視庁麻布署が捜査に乗り出し、今年5月に東京地検に書類送検されたが、8月下旬に不起訴処分となっている。 5月11日に「文春オンライン」が事件を報道した翌12日に、西武球団は「総合的に判断し
そこに至る前までには移籍が破談になりそうだという報道も出ていたが、「心配ない」と言われていたため、その移籍が「実現しない」と代理人から知らされたときにはさすがに、嫌な予感はした。 ただ、頭が真っ白になったわけではない。他にも“カード”があったからだ。 そもそも2023年に入り、鎌田は契約満了まで半年を切ったため、当時所属していたフランクフルトに断りを入れることなく自由に交渉できるようになった。それからは、数多の問い合わせやオファーが届いた。そして今年2月の時点で、そのうちの4つを精査した上で2つに絞って、交渉を進めることにした。 「移籍市場はサインをするまで、何が起こるかはわからない」 相手の気が変わったり、人事部門の責任者などが突如クビになるようなこともある世界。だからこそ、候補を1つだけに絞らず、丁寧な交渉をお願いしていた。実際、鎌田と話がしたいと言ってきたクラブの大半とはコンタクトを
フィリップ・トルシエに電話をしたのは、日本対クロアチア戦終了後、森保一、ズラトコ・ダリッチ両監督の会見を終えた直後だった。ドイツ、スペインを下してグループリーグを1位で突破した日本は、4年前のロシアW杯以上に目標であるベスト8に肉薄した。PK戦の末に敗れたクロアチア戦をトルシエはどう見たのか。そして大会を通しての日本を彼はどう評価し、今後に向けてどのようなアドバイスを贈るのか……。 勝敗を分けた経験の差 ——試合(クロアチア戦)をどう見ましたか? トルシエ 日本は準々決勝にかぎりなく近づいた。もちろん残念な部分はあるし不満もある。勝負はPK戦で決まったから結果はとても残念だ。しかし試合内容で評価すれば、クロアチア戦も素晴らしい試合を日本は実現した。経験豊かで偉大な選手たちを揃えたチームに対して、日本は震えることなく対等にプレーした。クロアチアにとってはとても危険な存在だった。日本は胸を張っ
ドイツ代表には何が足りなかったのか。 コスタリカとのグループリーグ3戦目は4-2で勝利し、試合前に課されていた最低限のノルマを達成しながら、日本がスペインを下したために、グループリーグ敗退を余儀なくされた。日本-スペイン戦のほうが先に終わったため、ドイツとコスタリカは最後の数分間、空虚な空気感の中で試合をせざるをえないことに。ドイツが最後の数分で6点とることなんてできっこない。 ミュラー「間違いなく最悪な事態」 試合終了のホイッスルが鳴ると、ピッチ上に倒れる選手たち、ベンチでは動くことができずに顔を覆う選手たち。試合後のテレビインタビューに応じたトーマス・ミュラーは「間違いなく最悪な事態」と2大会連続グループリーグ敗退にショックを受けていた。こわばった表情のハンジ・フリック監督は胸の中で何度、「こんなはずじゃなかった」と思ったことだろう。
アーセナルで行なわれているメニューには、2つのキーポイントがあった。 1つが、ポジションごとに分けないこと。アビスパのアカデミーでヘッドオブコーチングという役職につく壱岐友輔はこう証言する。 「我々が似たような練習をやるときには、ディフェンスの練習はディフェンダーの選手だけで、オフェンス練習もフォワードの選手だけというように、ポジションごとにシャドートレーニングで人形などを置いて実施することが多いんです。でもほとんどのメニューで、ポジションをミックスさせて役割を与えながら実施するというのが新鮮でした」 “選手たちが試行錯誤できるような仕組み” もう1つが、“選手たちが試行錯誤できるような仕組み”になっていることだ。 たとえばアビスパでは一般的に、「5人で攻めるメニューを相手がいない状態で何セットか行なったあとに、次に相手ディフェンスがいる状態で練習を行なう」のが通常のパターンだった。理論を
Jリーグ公式noteにて「スポーツ現場におけるハラスメントとの決別宣言」という記事がアップされたのは1月18日20時3分のことであった。執筆者はJリーグの佐伯夕利子常勤理事である。 9000字を超える長文だったが、何度もうなずきながら一気に読んでしまった。このタイミングで書かれたのは、昨年末に相次いだパワーハラスメントの懲罰決定(12月24日に東京ヴェルディ、30日にサガン鳥栖)を受けてのものである。 この記事に、私は2つの点で興味を抱いた。まずnoteという、一般にもなじみ深いプラットフォームが用いられたこと。そして発信者が、佐伯理事だったこと。スペインでの長い指導経験を持つ彼女だからこそ、日本の指導現場でのハラスメントを「人権侵害」と断じることができた。その事実を、われわれは噛みしめるべきである。 普段は自宅のあるビジャレアルから、オンラインでのミーティングに参加し続けている佐伯理事。
「いや、お前が言うなよ」 これは、僕が海外生活において脳内で発したランキング、堂々1位のセリフです。自分の実力、過去の言動、現在置かれた立場、すべてを棚に上げて平気な顔で意見を言ってくる西洋や南米、アフリカの人たちに対しての第一感であり、「いやいやいや、お前が言うなよ」が第2位であることを考えても、その突出具合は際立っています。 「自分のことは棚に上げる」どころか、あげた棚ごと鍵をかけて窓から放り投げ、割った窓を背景に腕を組んで仁王立ちしているくらいの整合性の取り方の時もあり、僕は困惑や怒りを通り越して尊敬の眼差しを送ることになります。どの口が言うんだよ、よりも先に、反射とも取れるような速度で心の中にある意見を口から表出できることへの羨ましさを感じるのです。 それってこどもの特権じゃないの?と思いつつ、その意見が(僕にとっては)どんなにピントが外れたものでも、目を見て、素早く、堂々と言われ
東京オリンピック開催が迫る中、日本スポーツ界の体質を再考する意味で、ある昭和の事件を振り返ってみたい。1965年(昭和40年)に起きた東京農大ワンダーフォーゲル部の「死のシゴキ事件」だ。上級生や監督による暴力が繰り広げられた3泊4日の山岳縦走の末、新入生1人が亡くなった。 前年の1964年東京オリンピックで金16、銀5、銅8のメダルラッシュを遂げ、肯定的に叫ばれた「根性主義」がはき違えられた結果、という見立てが当時からあった。その本質的な問題は、部活動をはじめとする現代のスポーツ界にもなお通底していて、拭いきれていないのではないか。 当時の新聞報道などから、事件のあらましを再現してみたい。 緊急搬送された学生の「異様な傷跡」 腕や背中一面への擦り傷。特に背中には、直径20センチほどのえぐられたような傷痕。両足の太ももも紫色に腫れ上がっている。そして、眉間から鼻にかけての打撲傷。 入院した大
たくさんの人たちが願っていた「高校女子野球の決勝を甲子園で」が、2021年8月、第103回夏の甲子園大会休養日に実現する(22日を予定)。長く女子の野球に冷淡だった日本高野連は、なぜこのタイミングで「女子も甲子園」を許可したのか。そしてこれからの課題は。 全国高等学校女子硬式野球連盟(以下女子高野連)と日本高野連(以下高野連)との交流の歴史、および関係者への取材から、その真相を探った(全3回の3回目/#1、#2から続く)。 1995年に朝日新聞社のキャンペーンに反対した高野連は、四津や堀の訪問によって市井の人々が女子大会を立ち上げたことを、また新聞報道などで女子高野連の活動をある程度は知っていたようだ。しかしその大会を援助しようとか、女子部を作って自分たちの手で女子を育成しようとは考えなかった。 それは女子高野連の活動を尊重したからかもしれないが、女子の受け入れに必要な数々のハードルを、乗
「選手の心の健康が無視されている」 こう綴って、全仏オープン開幕4日前に突如勃発した大坂なおみの記者会見拒否騒動の論点は、当初とは随分違う方向へ一気に進み始めた。 “大坂なおみでいるため”のストレスが重かったのか 1回戦の勝利後、宣言通り会見を行わず1万5000ドルの罰金処分を受けた大坂は、ツイッターで「怒りは理解の欠如。人は変化を嫌がるもの」と旧態依然のシステムを真っ向から批判したが、翌日になって長文の投稿とともに棄権を表明。「想像もせず、望んでもいない状況。みんながテニスにまた集中できるように、そして私の健康を考えて棄権します」とのことだった。その中で、2018年の全米オープン優勝以降、長い間うつ状態に悩まされていたことをも告白した。 今まさに進行形で心の問題を抱えているのであれば、なぜ会見が必要なのかとか、なぜこんな義務が課されているのかとか、そんな説得を必要とする問題ではない。「メ
中学で帰宅部の人気が伸びている背景を調べてみると、現在のスポーツ部活が抱える様々な問題が見えてきた。では高校生の部活ではどうなのか? そしてそれらの問題を解決するカギはあるのか?(全2回/前編へ) 高校生でも帰宅部(約20%)が増加中 中学と比べ、高校の部活は甲子園などを始め、規模も注目度もケタ違いだ。大学スポーツと比べても、メディアでの扱いやファンの多さで引けを取らない。 しかし、帰宅部が増加しているのは高校も同様である。高校2年生に対する調査では「部活に無所属」と回答した生徒は平成26年度は19.0%、平成28年度は20.3%と増加している(国立青少年教育振興機構調査)。直近の調査はないが、中学同様に増加傾向にあると考えていいだろう。 実際、20年以上のキャリアを誇る福島県のベテラン高校教師も生徒たちの変化を感じている。 「昔より帰宅部が増えた印象は確実にありますね。私の担任する学年の
2012-2013シーズンの公式試合を欠場していた安藤だったが、2013年7月、テレビ番組のインタビューで「4月に無事出産、母になりました」「最後まで悩んだけれど、1人の女性として生きることを選んだ」と公表。同時に、全日本選手権、そして2014年2月のソチ五輪に挑み、今シーズン限りで現役を引退することも表明した。 フィギュアスケートの世界では、母として競技復帰する前例がこれまでなかったが、すっきりした表情で安藤は言う。「いろいろとご意見もありました。それでも復帰を決めた一番の理由は、娘です」――。現役引退から8年が経った今、改めて安藤美姫に“現役最後の1年”を聞いた(全3回の3回目/#1、#2より続く)。 2013年、安藤美姫の長女出産報告と、そのシーズンを最後とする引退宣言を聞いた世間は、またバッシングを始めた。「アスリートなのに出産するなんて、何を考えているのか」。アスリートに恋人がい
「強い女性は男性から敬遠されがち」 日紡貝塚の女子バレーボールチームで主将を務めた河西昌枝は、結婚する前に、監督の大松博文の紹介で3人と見合いをしたが、相手の「優しさ」が「頼りなさ」に見えてしまい、すべて断ったという。厳しい競技生活を通じて精神的に自立したであろう彼女は、結婚する際にも、互いに依存することのない相手を望んだのかもしれない。 結果的に河西は良縁に恵まれたわけだが、女性アスリートの第二の人生には、いまなおさまざまな困難と制約がつきまとうのもまた事実である。それというのも、女性が精神的に自立することは、《結果として日本社会の中での「女らしさ」という社会通念的な枠組みからは、はみ出していくことになる》からだ……と説明するのは、元柔道選手で現在はJOC理事を務める山口香(1964~)である(山口香『残念なメダリスト チャンピオンに学ぶ人生勝利学・失敗学』中公新書ラクレ)。 山口は、日
糸谷哲郎八段が棋王戦(渡辺明棋王)に初挑戦する。圧倒的な早指しで竜王を獲得するなど将棋ファンに強烈なインパクトを残すとともに、将棋界で初となる“プロ入り後、国立大に進学した棋士”となり、大学院にも在籍した異色の棋士だが、その父・康宏氏に愛息のこれまでの歩みや教育法を、中・高校時代の同級生だった筆者に語らい合ってもらった(全3回の3回/第1回、第2回はこちら) 糸谷八段は中国地方有数の進学校で学びながら、奨励会で将棋の修行を続け、高校2年で四段に昇段。高校3年でプロ棋士になった。それ以降の活躍ぶりについて聞いてみた(広島学院のことを「学院」、康宏氏のことを「糸谷」と記す)。 「将棋界は斜陽産業」発言で伝えたかったはずのこと ――高校3年の10月、若手棋士の登竜門である新人王戦で優勝。その表彰式で、「将棋界は斜陽産業。僕たちの代で立て直さなければ」と言ったのが物議を醸した。 「あのコメントの前
1月10日、11日に行われた王将戦第1局でも挑戦者の永瀬拓矢王座を破るなど、36歳でも衰えとは無縁の強さを見せる名人・渡辺明。「脳の研究者に会いたい」と語っていた名人が昨年末に訪れたのは、東大教授で日本の脳研究の第一人者である池谷裕二の研究室。 Number将棋特集第2弾で実現した、脳を使うスペシャリストと脳を考えるエキスパートの2人による対談は、脳の老化から、棋士の研究法の変化、対局前や対局中における有効な脳の使い方まで、徹底的に論じられた。その白熱の内容は是非、将棋特集に掲載されている本編でお楽しみいただくとして、誌面に掲載しきれなかったのが、将棋とAIについて。 渡辺といえば、AIによる研究の深さでも知られる棋士。AIの性能が上がり続ける中、将棋の未来をどのように感じているのだろうか。 ◆◆◆ 池谷 AIによって若い棋士の将棋は進化していると思いますが、将棋というゲーム自体も進化して
異例の人事と言ってもいいだろう。 巨人が1月12日にOBで解説者の桑田真澄さんの一軍投手チーフコーチ補佐への就任を発表した。 普通ならば昨シーズン終了後に確定するはずのスタッフ人事。それが年も明けキャンプインを3週間後に控えたこの時期の異例の発表となった経緯を、原辰徳監督はこう説明した。 「昨年暮れの12月28日、最後に(山口寿一)オーナーと話をしました。その時にジャイアンツOBで非常に気になる後輩がいる、と。ぜひ巨人のために、巨人はもちろん全てに於いて戦力になってもらいたい人がいる、と。それが桑田真澄でした」 そこで山口オーナーの了承を得て、年明けの1月5日に桑田さんと直接会って、就任を要請。本人も快諾して、異例の就任発表へと漕ぎ着けたという流れだった。 ただ、異例というのはこの就任時期の問題だけではない。 義兄の投資失敗で作った借金の処理を…… 実は長年、巨人の取材をしてきて、桑田さん
西野勇士(ロッテ)、東克樹(DeNA)、田島慎二(中日)、堀田賢慎(巨人)、石川直也(日本ハム)、戸田隆也(広島)、近藤大亮(オリックス)、森雄大(楽天)、そして種市篤暉(ロッテ)――。今年、肘の靭帯に断裂を起こし、再建するトミー・ジョン手術を受けた現役のプロ野球選手は9人にのぼる。ルーキーの堀田を除けば、1軍ローテーションや勝利の方程式の一角を務めたことのある投手ばかりだ。 前編でお伝えしたトミー・ジョン手術への理解が広まった結果であるが、一方、この手術に至る怪我が増えていることを歓迎していいと言う訳ではない。手術をすれば怪我が治ると言うだけのものであって、一番いいのは手術にいたる選手が少なくなることだ。 事前に立てた“4つの仮説” では、肘の靭帯損傷の要因には、どんな要素が考えられるのか。 筆者が事前に立てた仮説をもとに、トミー・ジョン手術の執刀医である慶友整形外科病院の古島弘三医師に
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