[大学教師が新入生に薦める100冊]でエントリさせた一冊(このリストは、わたしのリストでもある)。 「言語がサイエンスの対象であることを明らかにする」と主張し、文系の範疇とされてきた言語学に、脳科学からアプローチする。人類共通の、一般的な文法そのものを明らかにするのが言語学だとすれば、なぜ脳が文法を決めることができるのかが、脳科学の役割だという。文理の垣根を取り払い、両側から攻めよという趣旨は明快で、再現性や反証性を重視する姿勢に共感が持てる。何よりも、言語の問題の核心は、「脳が言語を創る」という説がスリリングだ。著者は、言語の初期状態である普遍文法は、脳には生得的に備わっているというチョムスキーの生成文法説を支持し、fMRIによる研究や失語症・手話の国際比較も交えた分析を展開する。 一方で、チョムスキー礼賛が鼻につく。生成文法はたいへん興味深く、これからの進められてゆく研究の焦点だろう。