【岩田明子 さくらリポート】 東京・永田町の衆院第1議員会館。その12階の1212号室に、安倍晋三元首相の事務所があった。近くを通ると、必ず顔を上げて12階に目をやってしまう。事務所だけでなく、安倍氏が頻繁に利用していた飲食店や、永田町のホテルなどを訪れるたびに、同じ行動を取る。 「やあ、どうも!」 手を挙げて、何食わぬ顔で現れるのではないかと期待してしまうからだ。 しかし、そこに安倍氏の姿はない。不慮の死から間もなく9カ月になろうとしているが、安倍氏の不在による「穴」は埋まらないどころか、さらに大きくなっている。 安倍氏を20年以上取材してきた私だけでなく、立場の異なる人々も、さまざまな場面で同じような喪失感を覚えているのではないだろうか。 安倍氏に対する計36時間のインタビューをまとめた『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)が、ベストセラーとなっている。安倍氏の軌跡をたどる月刊「正論」主催
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