◇「仲間思い出せ」 1年前、居酒屋店主に「本音」 07年7月、青森の短い夏を焦がすねぶた祭りが近づいていた。 それはちょっとした事件だった。市内の繁華街にある小さな店で、突然、太いおえつの声が上がった。酔客のカラオケと若いホステスのきょう声が一瞬、止まった。さっきまで焼酎の水割りをちびりと飲んでいた青年が、目を真っ赤にして、しゃくり上げ、号泣していた。 「ここにいるみんなが苦労してるんだぞ。お前の考えは甘いんじゃないのか。頑張らねば、まいね(だめ)だ」 隣に座っていた居酒屋の店主(42)が諭した言葉が、彼の心を突き刺した。地元の名門高校を卒業したものの不定期の仕事にしか就けず、ゲームセンター通いの日々。おえつを抑えながら「家に居づらいんです」と漏らした彼に、店主は「ようやく本音を吐き出したな」と感じた。不器用だがかわいい弟のような存在。自分たちを仲間だと信じていた。翌08年6月、彼、加藤智