1955年11月21日のことです。エルヴィスは、サン・レ コードからニューヨークに拠点を持つ世界的レーベル、RCAビ クターに移籍したのです。移籍料は当時としては3万5000ド ルという破格なものだったといわれます。 このRCAビクター移籍を実現させた立役者は、トーマス・ア ンドリュー・パーカーという人物――この男は、パーカー大佐と 呼ばれており、生涯エルヴィスにつきまとうことになるのです。 なぜ、パーカー大佐と呼ばれるかですが、パーカーというのは 彼の本名ではないのです。大佐というのは敬称であり、自分を偉 そうに見せるための肩書きとして使っていたに過ぎないのです。 彼はどこの国の市民権も持たないオランダ人亡命者であり、本 名は、アンドレアス・コーネリス・ファン・クーイクというので すが、このアイデンティテイは既に捨てていたのです。 彼は米国にやってきて国籍を取得する目的で軍隊に入り、19